如何とも動きようがなく、やるせない思いのここ数日ですが、こんな折にせめて少しでも視野と知識だけでも拡げておこうとは思います。多くの書物を持ってこれなかった私にとっては、インターネットの便利さは大きな救いです。バッハのカンタータのフル・スコアは全曲PDFファイルをネットで手に入れることができます。その数曲の古い録音もやはりネットで聴くことができます。聖書もPDFファイルをダウンロードできます。全て無料です。
スークの交響詩「人生の実り」を、ターリヒ指揮チェコ・フィルの演奏を聴きながらスコアを見てみました。激入り組んだスコアです。実演はかなり難しそう。終わりの方にバンダのトランペット6本と女声合唱が出てくるのですが、それだけですか!? という豪勢な使い方。ターリヒがこの曲の初演の練習をチェコ・フィルとしていた最中に、チェコスロヴァキア第一共和国建国のニュースが入ってきたということ (1918年10月28日) 、またこの演奏会の成功がターリヒがチェコ・フィルの首席指揮者に就任するきっかけになったということで、こちらでは多少モニュメンタルな曲といった趣きがありますが、はて日本で演奏されたことはあるのでしょうか?
今日聴いたコンサート@ルドルフィヌム ドヴォルザーク・ホール
BBCウェールズ交響楽団演奏会
指揮:ティエリー・フィッシャー
メゾ・ソプラノ:サラ・コッノッリー
ピアノ:ウェイン・マーシャル
マスネ:組曲第3番「劇的風景」
エルガー:歌曲集「海の絵」
ガーシュウィン:ピアノ協奏曲 ヘ調
アンコール/ガーシュウィン (arr. 不明):アイ・ガット・リズム
アンコール/ (曲目未詳)
昨日に引き続きBBCウェールズ響の演奏会に行きました。昨日は指揮者の向かい側から、今日は2階最前列で聴いたのですが、今日の席のほうがさらにクリアに聞こえました。時にシャープすぎるほど。
マスネを演奏しても響きのニュートラルさは変わることはありませんでした。頭の中でフランスのオーケストラの響きをイメージしながら聴いてしまいましたが、一方イギリスのオーケストラはイギリスのオーケストラとしてフランスの音楽を演奏する、それはそれで何も問題はないのではとも思いました。今夜のマスネは彼らの語法による見事な演奏。
毎日のように、様々なヨーロッパの国々のオーケストラを聴いていますが、よく言われる「オーケストラは現代ではグローバル化されて、ローカリティが失われてしまっている」なんてことは全く感じません。むしろ私は毎日、それぞれの国のオーケストラのキャラクターの違いに驚いています。
エルガーはCDで聴くとなかなかとらえどころのない曲なので、生で体験できて良かったです。8割方ひそやかに歌われる、バランスの難しい曲。
ガーシュウィンは、フィッシャー氏がまたしてもかなり速いテンポで、そのせいかバタ臭さが無かったかわりに、まるでエリッツ・コーツの音楽のような軽やかさを得て、結果的にやっぱりイギリスのオーケストラだなあと感じました。マーシャル氏の演奏は、特に第2楽章の弱音の美しさが印象的でした。
アンコールの1曲目は誰のアレンジだろう? 冒頭はマーシャル氏の即興演奏のような感じで始まって、しばらくしてからオーケストラが重なりました。かなりオーケストラに容赦ないアレンジというか、正直超絶技巧が要求されているパートもありましたが、おかげで会場は大盛り上がりでした。
カーテンコールは長く続き、明らかに早く帰りたがっている楽員もいましたが、コンサート・ミストレスが解散させません。遂にマーシャル氏がピアノ・ソロでもう1曲披露。やっとお開きになりました。