Diary


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 今日聴いたコンサート@ルドルフィヌム ドヴォルザーク・ホール

 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会
                    (EFチクルス第4回 / 第1日)

 指揮:マンフレッド・ホーネック
 ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン

  ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
  アンコール/パガニーニ:パイジェルロの歌劇「水車屋の娘」から
                「ネル・コル・ピウ (うつろな心) 」による変奏曲 ト長調 作品38
  ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」


 今回の指揮者、ホーネックさんは翌シーズンからチェコ・フィルの首席客演指揮者になられます。先週に引き続き、今回の演奏会もレコーディング用のマイクが立ち、その旨のアナウンスもプログラムにあったので、いつかCDで発売される可能性もあるのではと思います。

 前半のツィンマーマンさんは圧巻でした。技術的な完璧さはこのレヴェルのソリストにとっては大前提なのでしょうが、それにしても油ののった音色といい、確実極まりない音程といい、ひたすら素晴らしかったです。しかしツィンマーマンさんの真価は決してそこにあるのではなくて、あくまでこのようなドイツ音楽の神髄ともいえるレパートリーで、これしかないという説得力ある解釈を提示し、聴衆に曲のプロポーションを実体験させるという点にあるのだと感じました。まこと、全てのフレーズやハーモニーが意味合いを帯びていて、ベートーヴェンが無駄な音符は一音符たりとも書かなかったのだ、ということを改めて教えられた気分でした。

 パガニーニはアンコールとしてはかなり長いものでしたが、こちらではツィンマーマンさんはヴィルトゥオーゾとしてもすさまじいレヴェルにあるということを鮮烈にデモンストレートされました。あまりの演奏の完璧さとコントロールされた弓捌きの美しさにすっかり圧倒されてしまいました!

 ホーネックさんの指揮は今回初めて拝見させていただきましたが、かなーりカルロス・クライバーを思い起こさせるものがあります。演奏もしたがって「流線型のブルックナー」とでも名付けたくなるようなスタイルに私には感じられました。テンポの動きがかなり多いです。また、楽譜はノヴァーク版を使用していたようですが、実際にはホーネックさんのアイデアによると思われる工夫が色々されていました。ヴァイオリンがトレモロのところを、プルトのうらの人だけがノン・トレモロで奏していたり、場所によっては全員ノン・トレモロで奏していたり。ティンパニにテーマのリズムを叩かせたり、アクセントを追加したり、改訂版から引っぱってきた音を追加したり。トランペットにミュートをつけたり。ここらへんはもしCDが発売されることがあるのなら、食いつく人たちがたくさんいらっしゃいそうですね。

 私にとっては、そうしたことよりも、演奏の繊細さが何より心に残りました。特にピアニッシモには拘っておいでのようで、お振りになられながら何度も「シーッ!」とやっておられました。オーケストラもしっかりとその要求に応えていたと思います。特に首席ホルン奏者のピアノ・ピアニッシモに関しては、私はホルンという楽器はこんなに弱い音が出せるものなのだ、ということを初めて知った、と言いたいくらいです。

 また良かったことに今日は聴衆がいつもに比べると非常に静かでした。私はここでブルックナーを聴くことが少し不安だったのですが、今日は本当に良かった。

 充実した演奏の結果として当然なのですが、聴衆の熱のこもった拍手を聞く限り、このコンビはかなり支持されていると言えると思います。

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