今日聴いたコンサート@市民会館 スメタナ・ホール
第63回「プラハの春」音楽祭 オーケストラ・シリーズ
ハレ管弦楽団演奏会
指揮:マーク・エルダー
バス=バリトン:ジェラルド・フィンレイ
ドヴォルザーク:スケルツォ・カプリチオーゾ 作品66
ヴォーン・ウィリアムズ:歌曲集「旅の歌」
エルガー:交響曲第1番 変イ長調 作品55
アンコール/ドビュッシー:夜想曲 から 第2曲「祭り」
私が好きな指揮者の1人にサー・ハミルトン・ハーティという人がいます。そのハーティが長年指揮者を務めていたのがこのハレ管弦楽団。一般的にはハレ管の指揮者を務めた人といえばサー・ジョン・バルビローリなのでしょうが、私にとってはとにかくサー・ハミルトン・ハーティなのです!!
ここでハーティ讚を始めてもしょうがないので止めますが、そんなこともあってハレ管弦楽団には興味があります。先日東京に戻っていた時に入手したエルダー氏指揮によるエルガー作品集のCD (「エニグマ」変奏曲のオリジナル・フィナーレというのが収録されております) が潔癖さを究めつつも暖かみのある瞠目すべき演奏だったので、今日はかなり楽しみにスメタナ・ホールに出掛けました。
果たして、期待に背かぬ素晴らしいオーケストラでした!! まずは配置が対向配置で、コントラバスが舞台最後列の中央〜下手に並んでいた (上手寄りは打楽器、ティンパニが一番舞台上手端でした) 時点でもう感激でした。実に良くコントラバスが響き、オーケストラを温かく包みこむように支えてくれます (もちろん配置のせいだけではなく、優れた奏者が集まっているからなのでしょうが) 。その上でクリスタルのように音程が正確で輝かしい高弦、安定度の高い管楽器と文句のつけようがないクオリティでした。ドヴォルザークの時にはいつもチェコ・フィルのサウンドを聴き慣れた自分にはトランペットの音色が少し固く感じたのですが、後半のエルガーではそのサウンドがぴったり作風に合致していて、なるほどなと納得させられました。
ヴォーン=ウィリアムズの作品は初めて聴きました。滋味あふれすぎる作風で一聴で味わうのは難しいと感じましたが、響きにも詩の内容にも惹き付けられるものはあるので、もし機会があればじっくり楽譜を読んでみたいと思いました。フィンレイ氏のよく通りつつも落ち着いた声はこの作品にうってつけでした。
エルガーの1番は何を隠そう、今から100年前にこのオーケストラが初演した作品。エルダー氏は基本的にしっかりと時間をとって細かく書かれたディティールを掘り下げながらも、饒舌にというよりはむしろ寡黙に音を紡ぎ、ジェントルさを欠くことのない本家本元らしい素晴らしいエルガー解釈を提示してくれました。
アンコールの「祭り」、中間部のトランペットがミュートをつけて演奏する部分は私が今までに生で聴いた中で最も小さなトランペット・アンサンブルの音量でした。一瞬「バンダ!?」と思ったほど。エルダー氏もカーテンコールの際にわざわざトランペットの方々にだけ起立を促していました。
こんなに素晴らしいオーケストラなのに今夜は空席が多くてもったいない・・・ そういえば、終演後搬入口のあたりにオーケストラの楽器輸送のトラックが停まっていました。マンチェスター〜プラハは空輸でなくて陸路移動なんですね!
BGM: エルガー:序曲「コケイン」
マーク・エルダー指揮ハレ管弦楽団 (2002年録音、Hallé Concerts Society)