Diary


5/23

 午前中にチェコ語のレッスンを受けたあと、ライプツィヒに向かうべくプラハ・ホレショヴィツェ駅へ。この駅は前回切符を買うのに手こずったのですが、今日も長い列が出来ていて (国際列車のための切符売場の窓口は2つ、しかも途中までそのうちの1つは閉まっていました) 、今回もしっかり冷や冷やさせられました。


 電車は少し遅れましたが、なんとかぎりぎりドレスデンでの乗換もうまくいき、プラハの駅を出てから3時間半強でライプツィヒに着きました。車内では藤原正彦著「国家の品格」を読み終えました。基本的には11月に名古屋で聞いた講演と同じ内容だったので新鮮さはありませんでしたが、氏の主張の基本的なところには同感です。ただライヴトークではさほど気にならなかった氏の超愛国心がこの本ではすごく気になったのは確か。読み手は文面の表層に翻弄されずに賢く氏の意を汲むことが求められるような気がしました。

 次に読み始めた本は亀山郁夫著「「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する」です。さて、着いたライプツィヒ駅はスケール大きくかつ清潔で、それに心なしかプラハよりも人々の表情も緩やかに見え、何だかホッとしてしまいました。

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 ホテルにチェックインしてからすぐにここで勉強をしている友人と落ち合いました。やはり一人事情に通じた友人がいるだけでも断然心強いですね。早速ニコライ教会などを目にしましたが、とりあえずはゲヴァントハウスに直行。今回ライプツィヒに来ることに決めた理由は、何と言ってもシャイー指揮ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏会があるということ。よってチケットが手に入るかどうかは大問題なのです。でも、無事に入手できました。


 今日聴いた演奏会@ライプツィヒ ゲヴァントハウス 大ホール

 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 大演奏会 (シリーズIII/6)

 指揮:リッカルド・シャイー
 バリトン:クリスティアン・ゲルハーエル

  ベートーヴェン:序曲「コリオラン」 作品62 (マーラー版)
  マーラー:歌曲集「子供の不思議な角笛」から
        a) 「番兵の夜の歌」
        b) 「この歌を作ったのは誰?」
        c) 「塔の中の囚人の歌」
        d) 「トランペットが美しく鳴り響くところ」
        e) 「この世の営み」
        f) 「少年鼓手」
        g) 「原光」
  ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92


 「大演奏会 (Grosses Concert)」とはまた大層な名称ではありますが、1743年以来の伝統ある名称であるとのこと。すごい歴史ですね。

 ホールは新しくて機能的なデザイン。ワインヤード形で、私の席はオーケストラのすぐ横。シャイー氏の指揮も前からばっちり見れました。配置は対向配置。書くのも止めようかと思うくらい、今月は対向配置を採用しているオーケストラをよく聴きます。

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 私のお目当ては1曲目のマーラー版「コリオラン」序曲。木管フル倍管でした。例によってティンパニが追加されたりヴァイオリンが1オクターブ高くなっていたりしましたが、さすがに現代に生きる私の耳では相当奇異な感じがします。ベートーヴェンを聴いている感じがしません。当時の聴衆にはどのように受け止められていたのでしょうか、興味のあるところです。

 シャイー氏の指揮は初めて生で見ましたが、パッションとオーラの強さもさることながら、ブレスとリズム感の良さには心底圧倒されました。アウフタクトが完璧でとにかく各出だしが良く合う良く合う。抜群のリズム感覚をバネにぐいぐいアグレッシブな表現へと突き進む突き進む。

 またオーケストラの一体感が何なんだこれはと思うくらいにありました。ドイツのオーケストラ特有の腰の据わった響きがありましたが、それだけではなく機能性も最高度。

 簡単に言って、私はシャイー氏とこのオーケストラの大ファンになってしまいました。でも、発売されているCDではどうしてあんなに薄味に聞こえてしまうのだろう。

 次の「角笛」は私の席からはゲルハーエル氏の声があまり聞こえず残念でしたが、後半のベートーヴェンがまた素晴らしい演奏でした。合奏精度の高さとテンションの高さと指揮者を含めた強い精神的一体感が三位一体となって聴衆を圧倒し尽くしていたと思います。シャイー氏のテンポはかなり速いもの。特に第3楽章のトリオは速かった。細かい点ではちょっとマニアックな指揮者がやってみたいなあと思うことはどんどんやってしまうような感じで、第2ヴァイオリンを追加したところがあったりとか、通常リタルダンドしたりメノ・モッソにしたりするところを敢えてイン・テンポで演奏したりとか、私みたいな聴衆にも聴いていて飽きることのないような演奏でした。

 ヴィオラの首席の方の激しすぎる弾き方も忘れられません。

 これはあくまで推測ですが、今夜のプログラムにはCDのためにライヴ・レコーディングされる旨が書かれていましたし、来シーズンもベートーヴェンの交響曲が数曲演奏される予定になっているので、もしかしたらこのコンビでベートーヴェンの交響曲全集のCDが作られるのでは。

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 大満足の大演奏会のあとは、数年前に雑誌で見てからいつかは行きたいと願っていた「アウエルバッハス・ケラー」で夕食。「ファウスト」が生きている。感激。遅くまで友人とあれこれ語り合いました。

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BGM: メンデルスゾーン:交響曲第2番「賛歌」 (1840年初演版)
     リッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団ほか
                               (2005年録音、Decca)

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