Diary


6/15

 午前中はペルガモン博物館へ。日曜日だからか、ウンター・デン・リンデンから博物館へ伸びる道には美術関係の露店が立ち並んでいて、見るだけでもなかなか楽しめました。

 博物館は色彩のインパクトの強い「イシュタール門」をはじめとしたバビロン関係のエリアがまるまる閉鎖されていたのは残念でしたが、「ゼウスの大祭壇」をはじめ、古代ギリシャやローマの建築や彫刻の時代を超えた生命力には圧倒されました。ついでに言うと、気合いが入り過ぎていてとても全てを聴ききれなかった日本語のオーディオガイドにも圧倒されました。色が落ちていたり、欠けていたりする彫刻から、オリジナルの雰囲気を想像するのは楽しいものですね。

berlin61501.jpg

 午後はシャルロッテンブルク宮殿のところまで出かけましたが、時間の都合があって内部を見るのは諦めて、すぐ近くのベルクグリューン美術館に入り、マティス、ピカソやクレーの作品と一時間弱の間向き合ってきました。一枚一枚をぱっと見た印象も#?♭だし、それらの絵画を数百点 (?) も見ながらそのそれぞれはどういう意味なんだろう?と考えていると、美術館を出る頃にはすっかり頭の中が%#?!&$になってしまいました。

 その後、後輩N氏と集合してヴァルトビューネにベルリン・フィルの演奏会を聴きに出発。ただその頃ものすごい雨と雷がやってきて、無事開催されるのか不安になってしまいました。

 幸い、最寄りの駅に着いた頃には雨は止んでいました。道中、やはりベルリンに旅行に来ていた後輩指揮者Y氏 (とそのご友人たち) と偶然遭遇。ヴァルトビューネにY氏登場予定という噂は聞いてはいましたが、まさかこんなにすぐに出会うとは思っていませんでした。

berlin61502.jpg

 N氏のご友人でベルリンに在住されている日本人の方々 (とそのうちのある方のご家族) ともお会いし、ぞろぞろと会場へ向かったのですが、開演20時で今はまだ18時過ぎだというのにとんでもない人混み。入場に際してはセキュリティ・チェックがあり、かなり長い時間門の前でのろのろしながら待たなくては入場できませんでした。入場できた時には、確かもうとっくに19時を過ぎていたはず。

 内部は出店 (とはいっても、綿飴や焼きそばはありません) も出ていてお祭り気分。オーケストラが舞台に揃い、さていつ始まるのかと待っていたら、何と天下のベルリン・フィルが私たち聴衆にウェーブを促すために自らウェーブ!! これには心底びっくりしました!!

 20時15分くらいになってようやく開演。


 今日聴いたコンサート@ベルリン ヴァルトビューネ

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
 「リズムの夜 (Los Ritomos de la Noche) 」

 指揮:グスターヴォ・ドゥダメル
 ソプラノ:アナ・マリア・マルティネス

  チャベス:交響曲第2番「シンフォニア・インディア」
  ファリャ:7つのスペイン民謡
  レヴエルタス:センセマヤ
  ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第5番
  ヒナステラ:バレエ組曲「エスタンシア」 作品8a
  マルケス:ダンソン第2番
  アンコール/ (曲目不明)
  アンコール/バーンスタイン:「ウェスト・サイド・ストーリー」 から
                「シンフォニック・ダンス」 〜「マンボ」
  アンコール/リンケ:行進曲「ベルリンの風」


berlin61503.jpg
 
 南米のオーケストラ音楽を愛好する私としてはどうしても聴き逃せないプログラムで、今回はこれに合わせてベルリンに来たようなものでした。ベルリン・フィルが「センセマヤ」を演奏するというのは南米音楽愛好家にとってはほとんど歴史的事件のようなものです。

 指揮がドゥダメル氏だということもあって、全体にリズミカルな良い演奏を楽しめました。また、ものすごい数の聴衆がしーんとなって音楽に耳を傾け、夕暮れの空から鳥のさえずりを風が運んでくるといった雰囲気も最高でした。

 演奏に関してもう少し感じたことを書くと、チャベスだろうがレヴエルタスだろうがヒナステラだろうが、やはりベルリン・フィルはドイツ語風 (危険な言葉ですが、例えこれを「細かい音までディテールを深めに発音して・・・」などと書けばさらに誤解を招きますし、言葉も足りなくなりますので止むを得ずこの極めて抽象的な表現を使います) の演奏をしているように私には感じられ、かつそれが悪いとは全く思いませんでした。そのことについて、日本人が西洋の音楽を演奏する時のスタンスの置き方、そのことに関係して、日本ではしきりに「ドイツ音楽はドイツ音楽らしく」「フランス音楽はフランス音楽らしく」といったことが言われ、考えられ、要求されていることから起こる、私たちが自分たちで西洋音楽の表現と受容の双方の幅を狭めてしまっているまことに残念な現状について、休憩時間はN氏としきりに話し合っていました。

 アンコールの1曲目は、聞き逃してしまいましたが、ドゥダメル氏が「今日誕生日の作曲家」と仰っており、しかもタンゴだったことから、恐らくネストル・マルコーニの作品であったと思われます。2曲目の「マンボ」は私の予想通りのアンコール曲でした。ベルリン・フィルの皆さんが「マンボ!」と叫ぶのは何とも普段のイメージとのギャップがあって楽しかったです。

 そして締めはもちろん定番の「ベルリンの風」でしたが、ドゥダメル氏がわざとフェイントで「もう1曲・・・ヒナステラから何か・・・」などというようなことを仰ってまるで全然違う曲のようなアウフタクトで振り出したので、出だしが何とも中途半端な感じで始まったのがおかしかったです。みんなで手拍子をしたのですが、広い会場ゆえ、音と視界に入る指揮にかなり時間差があり、ついつい棒に合わせて全然音と合わないタイミングで手拍子をしてしまいそうになりました。こういう時には専門職の感覚を上手に脱ぎ去りたいものです・・・

 終演後も電車に乗るまでが人混みで一苦労。かなり時間をかけてベルリン中心部のフリードリヒシュトラーセ駅まで出て、N氏、Y氏、それから別口でやはりヴァルトビューネに来ていた後輩T氏、そのご友人のトロンボーン奏者、そして私の5人で遅い夕食をとお店を探しましたが、なかなか見つからず。しかし最終的にはベルリン博士のN氏が良い店を見つけてくれました。駅の辺りでN氏に、ここの駅と周囲の雰囲気は大変御徒町駅のそれに似ていると思うと話すと、まさにここは御徒町駅界隈のモデルになったところであると教えてくれました。

 一時間ほど、丁度亡くなられて2年経たれた岩城宏之・佐藤功太郎両先生の思い出、そして打って変わってどうしようもなくくだらない話などを語りあって解散。ぎりぎり電車に乗ってホテルまで戻れました。

Copyright©  Takeshi Ooi. All rights reserved.