今日聴いたコンサート@ルドルフィヌム ドヴォルザーク・ホール
「ドヴォルザークのプラハ」音楽祭
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
(「ジョルジュ・エネスコ」ブカレスト・フィルハーモニー管弦楽団の代役として)
指揮:クリスティアン・バデア
クラリネット:ルドミラ・ペテルコヴァー
バセット・ホルン:ニコラ・バルデイルー
エネスコ:組曲第1番 ハ長調 作品9 第1曲 「ユニゾン・プレリュード」
メンデルスゾーン:クラリネット、バセット・ホルンと管弦楽のための演奏会用小品第1番
ヘ短調 作品113
メンデルスゾーン:クラリネット、バセット・ホルンと管弦楽のための演奏会用小品第2番
ニ短調 作品114
リスト:交響詩「前奏曲」
ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70
指揮者、ソリスト、曲目は変更なしでオーケストラのみ変更、というのは今までに聞いたことがありません。例えばNHK音楽祭でキーロフ管弦楽団が来日不能になったとして、指揮者はゲルギエフのままN響が代わりに出演ということはちょっと考えられませんよね?
厳しいスケジュールの中、よくオーケストラは出演を引き受けたものだと思います。尤もメインの曲目がドヴォルザークの7番だったこともあり、私としてはとても喜ばしいことでした。
エネスコの作品はコントラバスを除いた弦楽合奏とティンパニ (G音のみ) という編成で、旋法を用いたメロディーがユニゾンでひたすら奏される、という曲。シンプルな中にも荘厳さがあり魅力的な作品でした。指揮者のバデアさんはルーマニア人の方とはいえ、オーケストラもブカレスト・フィルであれば多分また違った響きがしたであろうということはただ想像するのみですが、チェコ・フィル弦セクション独特の美しい響きを味わえたのはそれはそれで良かったです。
メンデルスゾーンの作品はクラリネット界では有名な作品のようですが私は全く知りませんでした。クラリネット2本で奏されることもあるようです。オーケストラの楽譜はブライトコプフから出ているフル編成のものとペータースから出ている弦楽合奏のみのものと、少なくとも2種類はあるようですが今日はペータース版、つまり弦楽合奏の伴奏でした。それでもバセット・ホルンのソロというのはどうしても埋もれがちになってしまいますのでこれに管楽器やティンパニが加わったらバランスはかなり難しいのではと想像されます。
リストは客席がかなり盛り上がっていましたが、私としてはやはりドヴォルザークが最も聴き応えがありました。この曲に関してはトランペットやホルン、ヴァイオリンといった楽器にこのオーケストラに代々伝わる (?) オーケストレーションの改変がいくつかあります。トランペットやホルンの改変は他のオーケストラでもなされることがあり、私はこれまでそうした改変には反対派でしたが、チェコ・フィルで聴くと嫌なメタリックさがなく自然に抵抗なく聴くことが出来ました。要はどのように演奏されるかですね。
指揮のバデアさんは音楽の作り方が自然で、特に第2楽章などはテンポがかなり動いていましたがそれが音楽のフォルムに従ったものであったために強い説得力がありました。また、オーケストラのポテンシャルを引き出す術を心得ていらっしゃるようで、第4楽章の弦楽器など凄く熱い音がしていましたし、非常にアンサンブルの難しい第3楽章の中間部もラフ・ゴーイングでありながらもオーケストラはよく集まっていました。アンサンブルが難しいといえば第1楽章終盤のアッチェレランドの部分も全くノー・プロブレムでこれはオーケストラが流石でした。
それと良かったのはバデアさんが終始喜ばしげだったことです。楽章が終わるたびにかなりご機嫌なご様子でコンサートマスターなどに頷きかけていらっしゃいました。今回、指揮者とオーケストラはいわば想定外の出会いだった訳ですが、それが今日のような充実した結果につながるのは幸せなことだなあと嬉しく思いながら帰りました。