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3. 小学6年生の頃

 新しい住処では、重大な問題が起こりました。ラジオがうまく受信できないのです。当時、新曲はラジオで流れるのをカセットテープに録音し、それを何度も聴くことによってレパートリーを獲得してきた私としては大きな打撃でした。また「もんたさん」という、共に趣味を分かち合う仲間を失い、さらに、転校生がいきなり教室をジャックしてトップ10番組をやったりするわけにもいかず、自然とポップスの世界からは遠ざかっていくことになりました。

 とはいえど、新しいピアノの先生のところに行って、「何か弾いてごらんなさい」と言われて弾いた曲は、何とサザンオールスターズの「松田の子守唄」 (アルバム「タイニイ・バブルス」所収) 。こんな子供、私がピアノ教師だったら絶対生徒にしたくないと思いますが、先生は果敢にも私を生徒にしてくださり、「ウォータールーの戦い」の楽譜を与えてくれました。きっと当時の私の演奏はノリノリのロックン・ロール調だったことでしょう。この曲の出だしは、左手がいかしたエイト・ビートで始まりますからね。さてこの先生は見事に私の再教育に成功され、のちにはソルフェージュや楽典の基礎も教えて下さいましたし、モーツァルトに取り組む際にはイングリッド・ヘブラーのレコードを貸してくださったりしました。感謝しています。

 私は一体いつから指揮というものに興味を持ったかは実ははっきり覚えておりません。指揮に関する最初の記憶は小学校6年生の時です。音楽の時間に、ビゼーの「アルルの女」第2組曲から「ファランドール」を鑑賞しましたが、私はボールペンを指揮棒代わりに、聴きながら激しく腕を動かしていました。どうしてこんなことを覚えているかというと、曲が終わって気が付くと、ボールペンからインクが飛び出て手の中がベトベトになっていたからです。トホホ・・・

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