Diary


8/14

 今日は午前中から健康診断に行きました。私が最も苦手とするのは「待つこと」なのですが、みっちりと今日は待たされまくりました。何も考えず出掛けてしまい本を持っていくのを忘れたのは痛恨の極みです。


 ここしばらく、様々な機関や会社などとコンタクトをとっていますが、硬直化した組織で自分の要望を通していくのは大変ですね。何度も同じ話をしなくてはいけないことも多いです。できるだけ対応をマニュアルラインに乗せてしまおうとする組織もありますが、あとで損をするのは自分ですから頑張って抵抗しています。

 一番困るのは「折り返しお電話します」という言葉。これで30分以内に電話がかかってきたことがありません。最近はかならず時間を聞きますが「分かりません」と言われることが殆んどです(「夕方です」と言われたことも…)。時間に関して責任が持てない、という担当者の気持ちも分からないではないのですが、10分なんだか3時間なんだか明日になるのか全く予測がつかないというのは困りものです。

 改めて、オーケストラやオペラ業界の事務関係の人々が、いかにフレキシブルでコミュニケーション力に長けているかということを実感している今日この頃です。特にオペラ畑の人々。彼らは必要となれば夜中でも動きます。最終的にはやはり、お金を得るのが目的なのか、その仕事が好きでしょうがなくて人生を捧げているかの違いなのかなあなんて、検査を待ちながら思ってました。

 遅い昼食を摂りながら、ここのところ昼食の友であった、薩摩秀登著「物語 チェコの歴史」 (中公新書) を読み終えました。かなり読みやすかったです。一章はモーツァルトにも割かれています。プラハにいるうちに、この本を片手に行ってみたいところがたくさんできました。

 部屋に戻って、少し未聴のCDも消化しなきゃと、ムーティ指揮バイエルン放響&合唱団のケルビーニのミサ曲を聴きました (EMI Classics) 。あまりに晴れやかな響きに少々うつらうつらとしてしまったのであんまり何も書けませんが、ミサ曲も美しいけれど、むしろカップリングで入っている2曲のモテットに心奪われました。思わず目が覚めてしまったほど。

 夕方は、アカデミアで楽譜を見たり (何も買いませんでしたが、スークの「ある夏の物語」に手を出すところでした。ハープの伴奏でコール・アングレの二重奏があったりする、興味深い管弦楽曲です) 、ベートーヴェンやドヴォルザーク関係の本などをいくつか読み直したり。今日気付いたのですが、ワインガルトナーの「ある指揮者の提言」は1906年に書かれているのですね。つまり、「田園」の初演 (1808年) から「ある指揮者の提言」までは100年経っていなくて、「ある指揮者の提言」から現在までは100年以上経っているわけです。だから何だ、と言われてしまえばそれまでですが、色々と思うところがあります。この書物と、後年のワインガルトナーの録音があるために、彼がしていたような楽器法の改編などはつい最近までやられてきたような錯覚に陥ってしまうけれど、初演から現在までの時間的な距離の、真ん中に位置する時代の考え方であること。ニキシュの「運命」の録音が1913年であることを考えると、これらベートーヴェンの作品の演奏史の約半分の歴史は、実際に耳に出来るということ、など。またそのうちゆっくり考えたいことの1つです。

 夜はスポーツクラブに行って、少々筋力トレーニングとランニングをしました。運動音痴の私ですが、なんかアドレナリンが出るようで楽しいです。かなり忙しい時でも何とか週1回は行くようにしています。ところで、今日はこの道中にある古本屋に何となく入ってしまいました。ひやかすだけと思っていたのですが、一冊買ってしまいました。

 黒沼ユリ子「メキシコの輝き -コヨアカンに暮らして-」 (岩波新書)

 実は私、10年程前に黒沼さんにお世話になったことがありまして、メキシコでもご一緒したものですから、これを読まないと罰があたるなあと思いまして。ま、マスト・アイテムなわけです (毎日こんなこと言ってるな・・・) 。でも、読むの楽しみ (一応補足すると、黒沼さんは16歳で日本音コン第1位を受賞された名ヴァイオリニスト。その後、プラハで研鑽を積まれ、現在はメキシコ・シティで後進の育成にあたられています) 。

 部屋に戻ってからは相も変わらず書類の整理 (ここ3日くらいで何千枚かの紙をスキャニングしていると思います) と、実家の写真のネガをCD-Rにしたものを整理していたら、もうこんな時間です。うちの家系は、10年以上前に亡くなったじいさまの出征時の写真が今でもそのまま放置されているような家柄なので、唯一の男系子孫の私がえいやっと身を乗り出したのですが、こりゃ大変だ・・・

 そうそう、忘れてはいけません!プレトニョフとロシア・ナショナル管のベートーヴェンの交響曲全集 (Deutsche Grammophon) を聴き始めました。今日は「田園」と8番を聴きましたが、これが驚愕の演奏で唖然としています。特に「田園」に関しては、間違いなくこれまでのあらゆる演奏の中で最も個性的と言えるでしょう。とにかく百聞は一見に如かず、じゃなかった、百読は一聴に如かずなので、皆さん聴いてみて欲しいのですが、くにたち室内管の面々には本番が終わるまでは絶対に聴かないで欲しいとも思います。もうそれほどルール違反だろうそれは的ネタが満載なのでございます。

 ほかに今日はケーゲルとドレスデン・フィルの2種類の「田園」を聴いたり、ノリントンの新しいDVDを観始めたりもしていたのですが、これについてはまたいつかゆっくり。

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