Diary


8/13

 今日は午前中に、ある音楽事務所の命により宣材写真を撮りに西武池袋線は武蔵藤沢まで行きました。よく場所を確かめないで出掛けたら所沢の先なんですね。都内に比べるとのどかな雰囲気が漂っていました。


 当然池袋を通るわけですが、池袋といえばメトロポリタン・プラザのHMVです。最近はもっぱらタワーで買っていますが、ここはDVDの品揃えも多く、無視できない存在です。私はオープン当時から通っているので愛着もあります。もう荷造り間近だというのに、ついふらふらっと入ってしまいました。

 それでも (荷物が増えるので) なるべく買わないようにしたんですけれども、我慢しきれず手をのばしたのは・・・

 1. DVD:アバド & BPO ベートーヴェン: 交響曲第6・1・8番
   いつの間にか国内盤がなくなってしまったので、輸入盤で
   買いました。DVDの「田園」といえば、先日もアーノン
   クールのものを非常に楽しみましたが、こちらもマスト・
   アイテムですので、観ておかねばなりません (自分への言い
   訳)。
 2. DVD: ノイマン & チェコ・フィル
             ベートーヴェン:交響曲第9番
   最近までノイマンというと、何となく響きの浅いイメージ
   があって敬遠していましたが、先日DVDで観たドキュメン
   タリー、そして特に「新世界」が非常に素晴らしく、印象
   が変わりつつあります。というわけで購入。プラハに行く
   私としてはこれもマスト・アイテム (言い訳)。
 3. CD: クリュイタンス指揮バイエルン放送交響楽団・合唱団
           ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」
   この曲は思い入れの深い曲で、日本国内の正式な公演で指
   揮をした日本人はたぶん5人もいないはずですが、私はその
   中の1人です。そんなわけで、少なくともCDで手に入るこ
   曲の音源はコンプしているはずなのですが、このCDは初出
   音源ということなので購入しました。クリュイタンスはEMI
   のスタジオ録音もありますが、こちらは何せオケがオケな
   ので、どのような演奏になっているか、楽しみです。
   ちなみに私のお勧めCDは、ジャン・フルネ指揮のもの
   (Philips) ですが、最も入手が難しいのが残念です。最近聴
   いたものの中では、Jean-Marie Auberson 指揮スイス・ロ
   マンド管弦楽団、アンセルメ追悼のライヴ (1969年録音,
   Claves) に感銘を受けました。
 4. CD: ダウスゴ−指揮スウェーデン室内管弦楽団
            ドヴォルザーク:交響曲第6・9番
   これは買おうかどうか迷いました。このコンビでは、最近
   シューマンの交響曲のCDを買いましたが、若々しい演奏で
   とても楽しんだものの、目から鱗が落ちるような発見が出
   来なかったので。しかもBISのCDは高いですし。しかし、や
   はりレパートリー的にこれは外せないかなと思って買って
   みました。「新世界」は意外に決定盤がないのですが、6番
   の方は私としてはシェイナ指揮チェコ・フィル、アンチェ
   ル指揮チェコ・フィルの2種があればほかはいらないので
   は、というくらいです。
 5. 雑誌+CD: BBC Music Magazine 2007年8月号
       セーゲルスタム指揮BBCスコティッシュ響
         シベリウス:交響曲第6 ・7番、エン・サガ
   この雑誌の付録CDはいつも充実していて、しかも、雑誌の
   宿命ゆえすぐに手に入らなくなるので、出来るだけいつも
   買うようにしています。最近では尾高忠明氏とBBCウェール
   ズの「ローマの噴水」なんてのがありましたし、ノセダ指
   揮BBCフィルのシューマンの2番なんてすこぶる快演でし
   た。


 午後、ホテルの部屋に戻ってからはひたすら事務的なことをこなしました。電話電話電話電話電話ファックス郵便郵便メール電話電話メール。引っ越し荷物の行き先を、山口県から栃木県の私の実家に変更した場合の見積もりをとったら、39万円が17万円に下がりました。うーん。それから私の部屋のエアコンは16日に交換 (修理、ではなく!) することで話が進んでいるとのこと (聞いてなかったけど・・・) 。どうやら荷造りを暑さで倒れそうになりながらすることからは逃れられそうです。

 夕方、かなり疲れてきたので一休みして、途中まで観ていたアバド指揮ルツェルン祝祭管のマーラー「悲劇的」のDVDを、やっと最後まで観ました。はあっ、この曲ってこんなに泣ける曲だとは思いませんでした。昨年秋の来日公演でもこのコンビの同曲は聴いているのですが、はるかにこのDVDの方が感動しました。

 うまく言葉にすることはできないのですが、時折、これはマーラーではないのではないか、実はアバドは指揮していないのではないか、もしかしたらオーケストラだって演奏していないのではないかと錯覚してしまうほど、音と音楽がただ自然の摂理に従って存在しているように強く感じました。音というのは自然現象ですが、この演奏は神の配剤によって自然界にある音が紡がれ、音楽となったものが、人為を介さないまま、そのままこの世に現れ出てきてしまったような、そんな演奏のように感じました。音楽作品として、上記のような例えが最も似合うのはおそらくモーツァルトだろうと思いますが、その意味で、まるでモーツァルトのように演奏されたマーラーでありました。

 アバドの演奏はベルリン・フィルのシェフになった頃からずっと追い続けてきていますが、圧倒的に今現在の彼が一番凄いと思います。指揮ぶりはますます大したことをしていないように見えるのに、オーラが圧倒的です。それに、あんな笑顔を見せることはベルリン・フィル時代にはありませんでした。DVDの解説書に「黄金の笑顔」とありますが、まさにそう思います。全てのストレスから離れ、音楽の楽しみの世界のみに入り込んだ人だけに出来る笑顔であるように感じました。

 ほかにも感じたことは色々とありますが、今回良かったと思ったのはカメラ割りの秀逸さです。特別なことは何もありませんが、必要な時に必要な場所が、可能な限り美しいアングルで写っているように感じ、演奏の引き立て役を十二分に担っていました。

 ほかには、マイスキーのチェロで、バーンスタイン指揮ウィーン・フィルのシューマンのチェロ協奏曲を観ました。バーンスタインの映像は、今月ウィーン・フィルとのブラームスが出て来たりして、「やっと・・・」の思いがありますが、ウィーン・フィルとのシューマンも全部映像が残っているので、チェロ協奏曲だけじゃなくて、交響曲なども是非早く出して欲しいです。

 夕方からまた出掛けて書類の整理、ホテルに戻っても書類の整理に明け暮れましたが、そのかたわら地デジNHKのクラシック番組を見ていました。Staatskapelle Dresden の創立450年記念演奏会と、昨夏のザルツブルクでの、ハーディング指揮ウィーン・フィルの演奏会です。どちらもすでに録画したDVDを持っているので、何となくしか目にしていませんでしたが、ドレスデンの「アルプス交響曲」では、バンダがオケ中で演奏されていて意外でした。ハーディングの指揮姿にはいつも生きる力をもらいます。そして、彼の演奏を聴くと、その曲はハーディングが演奏しているような解釈しかありえないと思ってしまうのが不思議なところです。

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