Diary


9/27

 朝はリハーサルの見学にルドルフィヌムへ。音色の甘さは他の全てを許してしまうほどに魅力的。何がチェコ・フィルにこのような独特な音色をもたらしたのか、どのような演奏法と意識がこの音色を作り出しているのか、全く分かりません・・・


 帰りにチェコ・フィルのCDを2枚買って帰りました。ヴァーレク指揮で「スペイン奇想曲」と「シェエラザード」の入った1枚と、コンヴィチュニーの指揮でシューベルトの「グレート」。

 明日チェコ語のレッスンがあるので、午後は己の記憶力の悪さに頭を抱えながら勉強しました。とにかく単語を記憶しなければ始まらない!

 夜はまたルドルフィヌムへ。「プラハの秋」音楽祭もあと5日間で閉幕。いよいよ終盤です。


 今日聴いたコンサート@ルドルフィヌム ドヴォルザーク・ホール

 バンベルク交響楽団演奏会

 指揮:ジョナサン・ノット
 ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン

  フィビヒ:交響詩「トマンと森の精」 作品49
  ブリテン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品15
  アンコール/J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番
         イ短調 BWV 1003 第3楽章「アンダンテ」
  ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68
  アンコール/リゲティ:ルーマニア協奏曲 第4楽章 (推定)
  アンコール/ブラームス:ハンガリー舞曲第1番 ト短調


 バンベルク交響楽団を生で聴くのは2回目。前回は2000年の秋、ミッコ・フランクの指揮でシベリウスの2番などをオペラシティで聴きました。

 今日は弦楽器の配置が、先日のウィーン放送交響楽団と同じ、ヴァイオリンを対向にして、ヴィオラがファースト・ヴァイオリンの隣、チェロ・バスが上手というものでした。  

 お客の入りが悪い! そのことと関係あるのかどうか分かりませんが、今日は指揮者が前から見える席のチケットを持っていたのに、そのエリアが閉鎖されておりました。おかげさまで2階席2列目というかなり良い席で聴けましたけれど。私が座った席の左側など5〜6席空いておりました。

 演奏内容は極めて充実しておりました。今月最も緻密な演奏が聴けたような気がします。オーケストラの一体感が強く、音にまとまりがありました。ことさら重いとは思いませんでしたが、腰のすわった響きで、音は前にまっすぐ迫ってくるような印象を受けました。それにしても、今朝チェコ・フィルが練習していたのと同じホールとは思えない程、このホールはオーケストラによって刻々と姿を変えます。

 フィビヒの作品はメルヘン系物語もの。雰囲気に傾くよりは一つ一つの部品を丁寧に組み立てていくような演奏でした。

 ブリテンに疎い私は彼のヴァイオリン協奏曲を今日初めて聴きました。1939年に作曲されているので、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番より10年近くも前の作品ですが、何となく似た部分もあって面白かったです。ソリスト・指揮者・オーケストラ3者の集中力が極めて高く、普段は常にどこかしらわさわさしているプラハの聴衆も静まり返って聴いていました。演奏によってはもしかしたらとっつきにくい作品かもしれませんが、最初に聴けたのがこの演奏でとてもラッキーだったと思います。ツィンマーマン氏の表現は確信に満ちていました。

 アンコールは偶然にも先日のカヴァコス氏と同じ曲。ツィンマーマン氏はしっかりヴィブラートをかけた演奏で、カヴァコス氏とは全く違った趣きでした。

 本日大変強い感銘を受けたのはメインのブラームス。演奏スタイルは、極めてスタンダードで、新しい発見があったわけではありませんが、冒頭のコントラバスとティンパニの音の溶け合い具合からして完全にやられてしまいました。ティンパニは第4楽章の中盤のC音の6連符のところでは、今までに聴いたこともないような倍音を生んでいました。あのように美しく響いたティンパニの音を、私は今までに聴いたことがありません・・・

 音楽は、どちらかといえば寡黙に紡がれました。そのことに関連して、ブラームスに特有のポーコ・フォルテが、実にポーコ・フォルテでした。うーん、何とも言葉にできません。それは、まさにポーコ・フォルテだったとしか言いようがない!!

 最後のほうで少し涙が出ました。よもや自分がブラームスの1番を聴いて涙を流すなどとは思いませんでした。

 アンコールの1曲目は、作風、出版社 (黄色の表紙だったのでショット社だろうと推測) 、彼らの演奏履歴などからリゲティのルーマニア協奏曲であることはほぼ間違いないだろうと思います。これが滅法面白い作品でした。ノット指揮ベルリン・フィルのCDが出ているようなので、是非今度手に入れてみたいと思います。

 ハンガリー舞曲は、これまた驚くほどひそやかに始まりました。指揮者のアウフタクトでは曲が推測できなかったほど。自分のイメージと全く違いましたが、誰が演奏してもあまり違いのないこの曲の、新しい一面を教えてもらったような気がします。

 帰り道、心にじーんと何かが残っているような感じがしました。

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