Diary


9/13

 ベルトラムカという、モーツァルトが二度目にプラハに来た時に滞在した別荘に行きました。モーツァルトが弾いたのではというチェンバロ、それから当時のクラヴィコード、オーボエ、クラリネットなども展示されていました。場所的には、街の中心部まで馬車なら20分ほどだったでしょう。


 「1794年にはプラハでは3つのヴァージョンの「魔笛」を観ることができた。ドイツ語のオリジナル、チェコ語、それからイタリア語によるレチタティーヴォ版。」と書いてあったのですが、「魔笛」 のレチタティーヴォ版なんてどんなんじゃいと思ったものの、ちょっと聴いてみたくなりました。

 冊子が、日本語版だけ割高だったのは悔しかったのですが、色々と面白いことが書いてありそうなので買いました。「ドン・ジョヴァンニ」のテキストに隠されたいたずらなど、知らなかったことが多く書いてあるので、近いうちに時間を作ってじっくり読んでみたいと思います。

 夜は、昨日に続けてウィーン放送交響楽団の演奏会でした。

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 今日聴いたコンサート@ルドルフィヌム ドヴォルザーク・ホール

 指揮:ベルトラン・ド・ビリー
 バリトン:ウォルフガング・ホルツマイアー

  シューベルト:歌劇「フィエラブラス」 D 796 序曲
  シューベルト (orch. ブラームス):馭者クロノスに D 369
  シューベルト (orch. ブラームス):ひめごと D 719
  シューベルト (orch. ブリテン):鱒 D 550
  シューベルト (orch. ウェーベルン):6つのドイツ舞曲
                          D 820
  シューベルト (orch. ウェーベルン):
          歌曲集「美しき水車小屋の娘」 D 795
                     第10曲「涙の雨」
  シューベルト (orch. ウェーベルン):歌曲集「冬の旅」
                D 911 第20曲「道しるべ」
  シューベルト (orch. ウェーベルン):歌曲集「白鳥の歌」
                D 957 第9曲「彼女の肖像」
  アンコール/シューベルト (orch. レーガー):
                   音楽に寄す D 547
  R.シュトラウス:交響的幻想曲「イタリアにて」 作品16
  アンコール/シューベルト:劇音楽「ロザムンデ」 D 797  
                から 間奏曲第3番 変ロ長調
  アンコール/ヨハン・シュトラウス II:
              ポルカ「雷鳴と電光」 作品324


 今日は昨日よりもお客が入っていました。7割ほどの入りか。昨日と同じ、指揮者に相対するオルガン席で聴いたのですが、休憩時間にホールの係員の方に「席が空いてるから下の客席に移っていいわよ」と言われました (チェコ語なので、たぶん、ですが) 。指揮者が見たいからと言って留まりましたが、日本だったらホールの係員がそんなことは絶対に言いませんよね。

 序曲以外のシューベルトは、アンコールの「ロザムンデ」も含めて弦が10-8-6-4-3の編成で演奏されていました。歌の伴奏なので当然の判断だったと思います。

 今日聴いた席だと、折角のホルツマイアー氏が堪能できなかったのが残念。でも、背中越しでも、最初マイクがついてるのかと思ったくらいでした。マイクがついてるというのは、大きな声というだけではなくて、語るような声質が、本人の喉でないところから朗々と響いてくる感じがする、というような意味合いです。私の座った席からは、ビリー氏の伴奏棒の勘の良さを堪能しました。それと、やっぱりコンサートミストレスに心奪われます! 単純なあと打ちでさえ、あんなに愉しそうに musizieren (音楽する) できるなんて!!

 前半のプログラムでは「6つのドイツ舞曲」で、ウィーンのオーケストラたるところを見せてくれました。日本のオーケストラでやったら超難しく感じるのでしょうね。指揮者の腕の見せどころになってしまったりして。彼らの演奏はテンポが理屈で動いている瞬間が全くありませんでした。面白いことに、今までCDで楽しんでいたブーレーズ指揮ベルリン・フィルの演奏 (Deutsche Grammophon) では「ウェーベルンだなあ」と感じていたこの曲を、今日は「シューベルトだなあ」と感じたことでした。

 後半の「イタリアにて」は、かなり演奏の難しい作品です。昨年、山形交響楽団が東京公演で演奏して、その緻密で暖かみのある演奏が心に残っているのですが (これに先立って行われた山形での素晴らしい演奏がCDになっているので是非聴いてみて下さい) 、今日は全然違う傾向の演奏でした。特に第2楽章・第4楽章といったテンポが早くてアンサンブルが難しい部分を勢いにのせてバーン!と押し切って聴かせてしまう (別にアンサンブルが雑だったわけではありません。ラフ・ゴーイングでもみんなノリノリでついていけちゃう、という意味です) オーケストラのポテンシャルの高さと、そのことを熟知したビリー氏とのパートナーシップに圧倒されっぱなしでした。

 アンコールの「ロザムンデ」は音が出た瞬間に「ありえない」と思ったくらい美しい演奏。ヴァイオリンの音が本当に軽く、音10%・空気90% みたいなサウンドでした。そのシューベルトの演奏の心理作用か、「雷鳴と電光」も昨日よりしなやかな演奏となっていました。

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