今日聴いたコンサート@ルドルフィヌム ドヴォルザーク・ホール
プラハ放送交響楽団演奏会
ヴァイオリン:ルカーシュ・フデチェク
指揮:リボル・ペシェク
(ウラディミール・ヴァーレク氏の代役として)
ルカーシュ・フルニーク:メンデルスゾーンの
ヴァイオリン協奏曲への
トッカータと前奏曲 (初演)
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
アンコール/曲目不明 (ヴァイオリン独奏)
ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70
朝の9時半からプラハ放送交響楽団の公開ゲネプロを聴きにルドルフィヌムのドヴォルザーク・ホールに行きました。このホールの中に入るのは初めてです。豊穣な音響でした。ただ、思ったよりも客席が少なく、1200席ほどのように感じました (あくまで感覚です) 。
ゲネプロは交響曲から始まりました。指揮者ももちろんですが、オーケストラが実によく作品を知っていることがすぐに分かりました。ペシェク氏は大きな流れを示して、細部はかなりオーケストラに任せているように感じましたが、アンサンブルの難しい交響曲第7番がそれでも流麗に流れていくのには感動してしまいました。
ペシェク氏の指揮は下半身がぶれず、背中も曲がらず、ちょっとした仕草でオーケストラに的確に物事を伝えるという理想的なもの。その音楽作りは、ゆったりめのテンポでアゴーギグの揺れの幅の大きいものでした。その意味では先日聴いたイッセルシュテットとベルリン・フィルの録音に近い感じを受けました。
フルニーク氏 (1967年生まれ) の新作は、打楽器奏者1名と指揮者だけがステージにいるところから始まります。第一音は客席のバルコニーから奏されるトランペットによるメンコンのテーマ。それから順々にオーケストラの人たちが入ってくる、という趣向です。弦楽器の人たちが入ってくると、チューニングの場面もしっかり用意されています。
そのくらいの曲なら、ほかにも色々ありそうな気がしますが、この曲の趣向のすごいのは、その後、曲の最中にソリストのフデチェク氏も入ってきてしまうこと (指揮者と握手して、チューニングもします。その間、オーケストラは演奏を続けています) 。そしてなんと、アタッカ、全くの切れ目なしでメンコンに突入してしまうのです。まさに前奏曲。
フデチェク氏、かなり余裕の表情で、何だか私の一列前のヴァイオリン・ケースを抱えた美少女に何度も微笑みかけながらひゃらひゃらっと弾いていました。美少女もにやけているし。なんなのじゃろう。
ゲネプロ終了後、大家さんがペシェク氏に私を紹介してくださいました。
そのまま大家さんにルドルフィヌムの中を案内していただき、建物内の何人かの方々とお話をする機会も得ました。びっくりしたのは、この建物は本当にチェコ・フィルのためにあるようなもので、何とセクション別に狭くはない個別の部屋まであるのです。日本ではこのような恵まれた環境は全く考えられません。
部屋に戻ってから、夜、再びルドルフィヌムに演奏会を聴きに出かけました。フデチェク氏はゲネプロとは全く違うヴィルトゥオーゾ的な演奏を披露しました。まるでパガニーニの協奏曲かと思うような演奏に変貌してしまいました。うーむ、朝はわざと抜いて弾いていたな。アンコールの曲も、私の無知のせいで誰の何という曲かが分からなかったのですが、パガニーニのような超絶技巧ものでした。彼のあまりに威勢のよう弾きっぷりにはちょっと惹かれました。また機会があったら聴いてみたいです。
後半のドヴォルザークもゲネプロとは大変貌しました。アゴーギグの基本的な動きは同じですが、基本のテンポが朝と比べてかなり速めになっていて、第3楽章の終わりなどはかなり煽った感じになっていました。オーケストラは火の玉のように演奏し、圧倒的な印象を受けました。ペシェク氏は日本では地味な指揮者というイメージがあるかもしれません。確かに指揮振りは地味ではありますが、かなり注目すべき指揮者のように感じました。
実際的なことですが、弦楽器のはた3つは、私がトレモロで奏するべきなのではと思っていたところも、全て32分音符で奏されていました。それから、ホルンとクラリネットのヴィブラートも、歌う部分ではデフォルトになっているようでした。この興味深い事項については、時間をかけてじっくり探っていってみたいと思います。
ルドルフィヌムで初めて聴く演奏会としては、大変に満足できるものでした。