Diary


9/8

 大家さんの奥様のご案内で、トラム (路面電車) と地下鉄の乗り方の教えていただき、カレル橋からルドルフィヌムにかけて歩き、ショッピング・センターで日用品をいくらか買いました。


 ちょうどシャンプー売り場にいた時、全く偶然にも群馬交響楽団のチェコ人のフルート奏者の方にばったりお会いしました。かなりびっくりしましたが、彼は私がこちらに来たのを知らなかったので、さらにびっくりしていたようでした。お住まいも、私の部屋から最大でも徒歩で20分くらいしか離れていないようで。群馬交響楽団の楽員さんたちからは、彼は9月末までプラハにいるからと言われてはいたものの、連絡先が分からなかったので如何ともし難かったのですが、こんな風にお会いできるとは、ほとんど奇跡です。

 英語によるチェコ語学習の教材も買って、早速大家さん夫人を先生にチェコ語の勉強を始めました。まだ全ての言葉が呪文に感じますが、死活問題なので頑張るしかないですね。スラヴ語圏なので、単語のスペリングから想像できる言葉がとても少ないのです。 <Odkud jsi?> が <Where are you from?> 、 <To nic.> が <No promlem.> といったように。

 お昼を食べながら、夫人がポッと語る、「私が若い頃は西ドイツというのは月のよう (に遠いところ) だった」との言葉に重みを感じました。

 さて、夜は国立歌劇場に「トスカ」を観に行きました。

 
 今日観た公演@プラハ国立歌劇場

  プッチーニ:歌劇「トスカ」
 
   指揮:フランティシェク・ドルス
   演出:マルティン・オタヴァ

   トスカ:アンダ=ルイーゼ・ボグザ
   カヴァラドッシ:イーゴル・ヤン
   スカルピア:リヒャルト・ハーン
   アンジェロッティ:オルドジハ・クジーシュ
   堂守:ミラン・ビュルガー
   スポレッタ:ルボミール・ハヴラーク
   シャルローネ:ローマン・ボツェル
   牧童:クラーラ・ドジュガノヴァー
   看守:フランティシェク・リシャヴィー

   プラハ国立歌劇場管弦楽団・合唱団
   クフヌーフ児童合唱団
   (合唱指揮:イルジー・ハバーラ)


 名前を片仮名化するだけでも一苦労です。本当はアルファベットで書きたいのですが、ハーチェク ( Dvorak の r の上についている、あの記号です) などが日本のパソコンやサイトではうまく表示できませんので。また、例えば、指揮者の方は Drs さんというお名前なのですが、子音しかないお名前なのでどう片仮名化したらよいのか分からないです。

 プラハには国立歌劇場のほかに、ヴルタヴァ沿いに経つ国民劇場もありますが、国立歌劇場は国民劇場よりもよりグローバルな演目を並べる、ということになっているようです。公演は毎日のようにやっています。

 公演予算が明らかに少なそうでした。セットはいたって簡素で、聖堂は一見して「これは絵です!」と分かってしまうようなものだったし、スカルピアの机は3万円くらいで家具屋で売っていそうでしたし、椅子は劇場のどこかから引っ張ってきたような代物でした。

 客席から照明器具と音響のスピーカー (そこからテ・デウムのオルガンが至近の距離感で鳴りました) も丸見えでした。

 オーケストラの編成も、管はさすがにオリジナルだったと思いますが、弦の編成が10-8-6-5-3 と、「トスカ」をやるにはいささか小さすぎる感がありました (実際の演奏を聴いても) 。またテ・デウムで出てくる低音の鐘が楽譜より高い音域の普通のチューブラ・ベルで演奏されて、さすがにチープ感が漂いました (シンセで何とかならないのでしょうか) 。このシーンは、低音の鐘と高音の鐘が重なることの空間性が聴き所の1つですので。

 残念ながら指揮者の全く見えない席だったので、舞台をそのぶん良く見ましたが、レパートリー公演の欠点というべきか、細かい動きの意味合いなどによく理解できないことが多かったです。それに、アンジェロッティが と言われているのに普通に歩いていたり、堂守は扉が閉まっているのに (「開いてる!」) と驚いたり (これは、扉が閉まっていたのが問題で、そのこと自体は堂守のせいではないですし、もしかしたら堂守は視力が良くて、少し離れていても鍵がどうなっているかが分かる、という設定だった、という可能性もありますが。いや、ないな・・・)。

 歌手たちは、洗練されているかどうかはよく分かりませんでしたが、やはりスタミナは日本人と全く違うなあと思いました。直接音のような響きで最初から最後までガンガン歌いきっていました。

 でも、でも、クラリネットがヴィブラートを思いっきりかけているのを聴いて、「ああ、チェコだあっ」と思えただけでも充分に満足でございました。

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