Diary


11/1

 午前中はゲネプロ。昼に部屋に戻ってきて、夜はコンサート。一日二回ルドルフィヌムに通うというのは最も多い私の生活パターンです。

 今日聴いたコンサート@ルドルフィヌム ドヴォルザーク・ホール

 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会
                   (ABチクルス第2回 / 第1日)

 指揮:トマーシュ・ネトピル
 バリトン:イヴァン・クスニェル

  ドヴォルザーク:交響詩「水の精」 作品107
  ノヴァーク:歌曲集「新しい王国の谷」 作品31


 この演奏会は当初マーツァル氏が指揮することになっていましたが、9月の辞任騒動のあと、ネトピル氏に変更になりました。

 ネトピル氏は1975年生まれ。うーん、私より1歳若い・・・ プラハのアカデミーでビェロフラーヴェク氏に師事、2002年に第1回ショルティ国際指揮者コンクールに優勝、既にシュターツカペレ・ドレスデンなどの名門オーケストラを指揮しています。知らなかったのですがN響も指揮されているということです。チェコの新しい世代を代表する指揮者であるということは間違いないでしょう。今日の演奏も極めて充実したものになりました。切れ味の鋭さと抜群の勘の良さ、知と熱のバランスの良さで、精緻であるのにもかかわらず理屈っぽさの全くない音楽を創り出されていました。

 とにかく、私にとっては初めて生で聴くチェコ・フィルのドヴォルザーク! ただし、素晴らしい演奏ではありましたが、ほとんどリハーサルを見れなかったがためにこの素晴らしさがオーケストラのもともとのポテンシャルに寄りかかったものなのか、指揮者の手腕なのかが良く分からなかったのが残念です。ただ一つ感じたのは、チェコ・フィルはバランス的にヴァイオリンが強い、というかよく響くのですが、通常ほかの楽器に消されやすい強奏部でのヴァイオリンの旋律 (しばしばドヴォルザークを演奏する際の悩みの種ですよね) なども、それ故にこのオーケストラでは問題なく聞こえるのだなということです。ちなみにこの曲、初演はハンス・リヒター指揮のウィーン・フィルなのですが、その前にここルドルフィヌムにおいてコンセルヴァトワールのオーケストラによる公開リハーサルが行われているとのこと。この空間でドヴォルザークはこの曲を聴き、そして最後の手直しをしたのかと思うと、ドヴォジャキアンとしては痺れるものがあります。

 ノヴァークの歌曲集はもともとはピアノ伴奏のものを後年作曲者自身が管弦楽伴奏にしたもの。自然を讃えた美しきロマン派音楽です。バリトンのクスニェル氏は朗々と響き渡る声を持ち、最高音のA音でも響きを失わずに楽々と出せる見事なバリトン。これまでに聴いたこの地のオペラ歌手で最高の歌声でした。

 後半のシベリウスも細かく神経の行き届いた演奏。カーテン・コールの際、チェコ・フィルの演奏会で初めて弦楽器の楽員の方々が弓を振って指揮者を讃えているのを見ました。初日からかなり完成度の高い演奏だったので明日の期待が高まります。

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