Diary


11/21

 朝の8時、昨晩ご一緒した氏が私が昨年福井で演奏した伊福部作品のDVDを持ってきてくださいました。早速移動中に見てみましたが、意外にきちんとした演奏だったので安心しました。昨年のことなのにかなり懐かしく感じたのは何故でしょうか。


 福井から盛岡まで、6時間以上かけて移動です。何だか気分が優れず、寝てばっかりいました。


 今日聴いたコンサート@岩手県民会館 大ホール

 盛岡音楽院50周年記念 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団演奏会

 指揮:ズデニェク・マーツァル
 ピアノ:吉田 裕子

  ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18
  ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95 「新世界から」
  アンコール/ドヴォルザーク:スラヴ舞曲集 作品72 第7番 ハ長調


 盛岡音楽院は、地元では大変に有名な音楽教室だそうで、有名どころでは小山実稚恵さんなどもこの音楽院で学ばれたそうです。優秀な生徒をどんどん海外のアーティストと共演させているようで、そのエネルギーはすごいですね。

 盛岡には仙台フィルの副指揮者をしていた頃に何回か来ましたが、そういえば、ここ岩手県民会館で小山さんの弾かれるグリーグの協奏曲を聴いたことを思い出しました。

 今日のソリストの吉田さんも盛岡音楽院のご出身、多くの方の応援があっての晴れ舞台であったと思われます。このような催しで私が好きではないのは、演奏終了後に小学生くらいの子供たちが (親に言われて) 何人も舞台まで花束を持っていってわざとらしくソリストを盛り立てることなのですが、今日はそのようなこともなく、通常の演奏会としての気品が保たれていて安堵しました。

 メインの「新世界」をチェコ・フィルの演奏で生で聴くのは初めてで、大変興味深く聴きました。生演奏を聴いて、観てこその発見が多くありました。それは弓の使い方だったりもしますし、第2楽章後半の弦楽器のソリの奏者の割り振りだったりもします (4 Soli の部分は第2・第3プルトが演奏していて、第1プルトはその間にミュートを付けて、その後の2 Soliの部分を演奏していました。私もこれがやはり一番良いと思います) 。バランスのとり方も少し独特に感じました。重要でない内声部や金管楽器のフォルテの和音などはかなり音量が減らされ、とにかく主声部を浮かびあがらせる方法で、つまりはディティールの細部を浮かび上がらせるような演奏とは一線を画します。私などはいつもディティールばかりにこだわるので再考を迫られた気分です。

 いつも感じていたのですが、今日改めて思ったのはコントラバス・セクションの音の透明度の高さです。遠くまでクリアな音程を届かせることのできるこのセクションのサウンドは全く独特です。第2楽章のピッツィカートはレガートでしたし、第3楽章の5~6小節目も音がものすごくクリアで、その後ヴィオラに引き継がれた時にも音色が同じなのでまるで一本の楽器で続けて演奏されているがごときでした。

 弓順などは、楽譜の指示にこだわるよりはより実際的な方法がとられていましたが、テンポやアゴーギグなども、理論よりは実際の演奏経験を積んでいった中で培われてきたものなのではないかと感じました。それは抜群の説得力を持ってはいたものの、その性質ゆえに他の指揮者やオーケストラが猿真似をすることなど慎むべきでしょう。

 お客さまの反応は上々で、珍しくも楽員の何人かの方々が退場の間ずっと続く拍手に手を振って応えてらっしゃいました。

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