Diary


12/6

 まずはコヴェントガーデンのロイヤル・オペラでチケットを入手。初日なので無理だろうと思っていた「パルジファル」のチケットを簡単に手に入れることができました。チケット・オフィスのパソコンの画面上で、とりたい座席から舞台がどのように見えるのかというイメージを実際に写真で見れるのがとても良いです。


 雨が降る中、バッキンガム宮殿へ。柵の外から衛兵交替を見ました。冬なので衛兵たちもコートを着ていて、よく写真で見るような赤い制服を見られなかったのが残念。見るなら春過ぎが良いと思われます。

 昼食後はビッグ・ベンを横目にウェストミンスター寺院に。所狭しと墓、墓そして墓。もう少し広々としたスペースがあればより美しく映えるだろうに・・・ しかしながら、エリザベスI世の墓、戴冠式のイスなど長い歴史を垣間見るものの前では心が深くなりました。

 バービカン・センターに行って明日と明後日の演奏会のチケットを入手。コヴェントガーデンに戻ってロイヤル・オペラへ。


 今日観た公演@コヴェントガーデン王立歌劇場

 ワーグナー:舞台神聖祭典劇「パルジファル」

  指揮:ベルナルト・ハイティンク
  原演出:クラウス・ミヒャエル・グリューバー
  再演演出:エレン・ハンマー

   グルネマンツ:ジョン・トムリンソン
   第1の騎士:ニコラ・マティシッツ
   第2の騎士:クルジシュトフ・シュマンスキ
   第1の小姓:ハリエット・ウィリアムズ
   第2の小姓:レベッカ・デ・ポント・ディヴィス
   第3の小姓:ジ=ミン・パーク
   第4の小姓:ハオイン・シュー
   クンドリー:ペトラ・ラング
   アンフォルタス:ファルク・シュトルックマン
   パルジファル:クリストファー・ヴェントリス
   ティトゥレル:グィンネ・ハウエル
   天からの声:プメザ・マトシキザ
   クリングゾル:ウィラルド・W・ホワイト
   花の乙女たち:エリザベス・クラッグ / アニタ・ワトソン
          キシャニ・ジャヤシンゲ / マリン・クリステンソン
          アナ・ジェイムズ / プメザ・マトシキザ
   
   コヴェントガーデン王立歌劇場合唱団
   (合唱指揮:レナート・バルサドンナ)
   コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団


 劇場内部への入り口が大変に狭く、ごみごみした感じでしたが、中のレストランやバーなどのスペースが非常に大きくてびっくりしました (17時開演なのに15時半には開場していて、早く劇場に来てゆっくりと食事をしている人たちが大勢いました) 。それでもなお人がごった返していて、この劇場の収容人数はかなり多いとみました。

 一番上のフロアの後ろの方 (Upper Amphitheatre と名付けられたフロア) で見たからか、オーケストラの音が乾いて遠く聴こえたのは残念でしたが、歌は割に近い距離感に聴こえ、歌を聴くためにはバランスが良く出来ている劇場であると言えると思います。

 今日はハイティンク氏が2002年にロイヤル・オペラの音楽監督を辞任して以来、初の復帰公演、しかも初日とあって、氏が登場した時点で既にブラボーが飛んでいました。そしてその歓声は幕を追うごとに大きくなり、第3幕が始まる時や終演後には大歓声で劇場が満たされました。オーケストラの氏に対する信頼と愛情も絶大のようで、第3幕が始まる前はハイティンクの促しにもかかわらず指揮者を讃えて起立をしませんでしたし、終演後もそうでした。終演後に起立をしないで指揮者を讃える情景というのは初めて見ました。スタンディング・オヴェイションの意味で立ち上がって指揮者に拍手を贈る楽員の方はいらっしゃいましたが。

 「パルジファル」は話の内容等は分かるものの、前奏曲以外は自ら取り組んだこともないので、あまり的確な感想は持てないのですが、そんな私にでも分かったのはオーケストラがこの長いオペラを終始極めて精妙に演奏していたということです。これ以上に精緻な演奏をピットから聴いたのは、私の経験ではかつて東京でクライバーが「薔薇の騎士」を振った時だけのような気がします。

 ハイティンク氏の演奏を生で聴くのは今日が初めてでしたが、録音や録画からも感じていた、良い意味での演奏の寡黙性というか、決して声高にならずに、常に深くて落ち着いた呼吸の中で音楽を進める感覚というのは実演でも全く同じで、深い感銘を受けました。

 歌手陣 (かなり強力なメンバーに、実に国際色豊かな若手たちが混ざっていますね) もハイレベルな状態で統一されていて、聴いていて凸凹を感じることがほぼありませんでした。

 休憩時間はレストランとバーのエリアがかなりごった返します。コーヒーにありつくまでには少々忍耐が必要です。おそらくはそれを知っているお客さんたちが、幕が閉じると我先にと客席から出て行くので、カーテンコールは全曲が終わるまで全くありません。終演後も、トゥッティでのおじぎのあとに幕が閉まったらもうおしまい。この終演後のホワイエ・エリアの混雑の有様といったら最悪なものがあります。クロークの辺りでは一歩進むのも困難なほどです。

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