Diary


12/8

 雨が降り、風が吹く中、タワーブリッジを見に出かけました。が、あまりの寒さに早々に退散・・・

 土曜だからなのか、地下鉄や街中がものすごい混雑でうんざりです。

 午後はバレエを観劇しました。


 今日観た公演@コヴェントガーデン王立歌劇場

 チャイコフスキー:バレエ「くるみ割り人形」 作品72

  振付:ピーター・ライト (レフ・イヴァノフの振付に基づく)

  ドロッセルマイヤー:アラステイル・マリオット
  クララ:ジェンマ・ボンド
  ハンス=ペーター / くるみ割り人形:ザハリー・ファルク
  金平糖の精:アレクサンドラ・アンサネッリ
  王子:ヴァレリー・フリストフ

  コヴェントガーデン王立歌劇場バレエ団

  指揮:パヴェル・ソロキン 

  コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団
  ロンドン・オラトリー・ジュニア・コーラス


 親子連れも多く、クリスマス感たっぷりの公演でした。

 今日とれた座席は、指揮者が良く見える席だったので、バレエの指揮者がどんな風に振っているのか興味津々に拝見したのですが、今日の方 (プロフィール一切不明) はたまーにしか舞台上に目をやることもなく、割と楽に指揮されていました。慣れればこんな風に出来るものなのかな・・・

 バレエというのは、ストーリーの流れとあまり関係のないディヴェルティスマンなどが露骨に繰り広げられるのが個人的には何となく好きにはなれないのですが、今日は暖かみがあって楽しめるセットと、華やかな踊りに自然に魅き込まれて、気付いたらそんなことを気にせずに楽しんでいました。遅ればせながらバレエというものが素敵なショーだということを確認した次第。それと、この版では原曲に対して曲順の変更や曲の削除・追加が一切無いのも良かったです (もっとも、「くるみ」は、音楽家にとっては大変気になるこの種の問題が最もない作品の部類ではありますが) 。

 コヴェントガーデンもここは渋谷か原宿か!と思うほどの賑わいよう。

 ホテルに一旦戻って、夜はバービカン・センターに再出陣。


 今日聴いたコンサート@バービカン・ホール

 BBC交響楽団演奏会

  指揮:イルジー・ビェロフラーヴェク
  ヴァイオリン:イヴァン・ジェナティー

  スメタナ:歌劇「売られた花嫁」 から 序曲と3つの舞曲
  フェルスター:ヴァイオリン協奏曲第1番 ハ短調 作品88
                           (イギリス初演)
  ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 作品88


 私にとっては必聴の演奏会なのですが、お客はあまり多いとは言えず。ホールは確かに大きくはあるのですが、2階・3階席は売り出してもいないよう。

  
 ホールの残響はあまりなく、スタジオ的な響き。楽員の方々の表情は明るく、「今日は放送とCDのために録音するからお静かに」というアナウンスにも、半分聞き逃してしまったのが悔しいのですが「コーヒーがなんとかー」などというジョークが挟まれていて、くつろいだ雰囲気が感じられました。

 ビェロフラーヴェク氏の指揮をライヴで拝見するのは初めてだったのですが、最初の1拍からやられてしまいました。とにかく棒が巧い! 技術的には優れていると言われる日本人の指揮者のどんな人よりも巧いのではないかと思います。姿勢はぶれないのですが完全に自由になっているし、棒の動きで音楽の表情が全て描かれています。まさに指揮法の巨匠と申し上げてもよい存在だと思いました。

 BBC響もものすごいテンションで応えていて、すこぶる爽快でした。

 フェルスターはチェコの作曲家で、今夜の作品はイギリス初演とはいっても1910年から11年にかけて作曲されたもの。ソプラノ歌手であった彼の奥さんがマーラーに引っ張られて仕事をしていたそうで、ハンブルクからウィーンへと移り住みながら、彼自身マーラーと親交があったということです。

 ハ短調のヴァイオリン協奏曲というのはかなり異色であるとは思われますが、実際相当に渋い作品でした。作品の響き自体はさほど難解ではなかったのですが、私の力では構成などは一度聴いただけではすっと理解は出来ませんでした。ただ、マーラーなどと組み合わせて彼の作品を演奏したら面白いかな、などとちょっと思いました。

 後半はドヴォルザークの8番。今日出かけるにあたって、先日購入した、ビェロフラーヴェク氏とチェコ・フィルが90年代初頭にシャンドスに入れた同曲の録音を聴いていきました。その録音はとても良いもので、もしかしたらこの曲のベスト・レコーディングではないかと思うほど感激したので、自ずと期待が高まりました。

 結果は期待に違わず、まこと見事な演奏だったのですが、アプローチがチェコ・フィルとのものと全く逆と言ってもよいほどでかなりびっくりしたのが正直な感想です。どちらかと言えば落ち着いたテンポで進むチェコ・フィル盤に比べ、今夜は両端楽章のテンポはかなり速く、また全体を通じてアゴーギグがかなり大きくとられていました。第3楽章のトリオのあと主部に戻るところをピアニッシモで始めるなどは他の指揮者もなさることではありますが、今夜はかなり極端な感じでしたし。またチェコ・フィルのボーイングやアーティキュレーションはその多くが今夜は採り入れられておらず、全くBBC響独自のものとなっていたのが印象的でした。この変化が氏のどんなお気持ちによるものなのか、かなり興味があります。

 今でも氏の鮮やかな指揮ぶりが目に焼き付いてしまっています。

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