Diary


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 今日の本番@新国立劇場 中劇場

 新国立劇場バレエ公演 「カルメン by 石井 潤」

  1. ビゼー (arr. ロビン・バーカー):バレエ「カルメン」

    振付・演出:石井 潤

    カルメン:厚木 三杏
    ドン・ホセ:貝川 鐵夫
    エスカミーリョ:マレイン・トレウバエフ
    ミカエラ:大湊 由美
    スニーガ:市川 透
    フラスキータ:寺島 まゆみ
    メルセデス:西山 裕子
    パスティア:ゲンナーディ・インリン

    新国立劇場バレエ団
    東京フィルハーモニー交響楽団


 早いもので今回の公演も今日で最終日となった。今回のお話は急なものだったので、開演前、楽屋にいて、時々、この仕事をしていること自体がまだ信じられないような、夢の中にいるような気持ちになることがあった。そのままの気持ちだと仕事が出来ないので、何回か一生懸命気を引き締めなければならなかった。

 これだけの運営組織とハイ・レベルの舞踊家の集団でありながら、曇った空気なく、とても現場の見通しが良く、すこぶる仕事がしやすかった。初めての私に気を遣ってくださったということもあるのだろうが、牧阿佐美芸術監督のもと、カンパニーがびっちりと一致団結しているということあってのことであろう。

 東京フィルの皆さんの集中度の高さとアンサンブル力には本当に助けていただいた。おかげさまで私の方はぴっしりと舞台に集中して振ることが出来た。それから東京フィルを指揮させていただくといつも思うのだが、楽員の皆さんの演奏から、無言のうちに教わることがとても多い。オーケストラはまこと指揮者の最良の教師である。

 舞台監督の森岡さんとは初めてのお仕事だったが、彼のもとでお仕事をされているスタッフの方々は偶然にもほとんど全員どこかのオペラやミュージカルで現場をご一緒したことのある方々だらけで、私にとってはずいぶん心の憩いになった。

 今日の主役、厚木さんと貝川さんは何かをぶつけてくるかのような熱い表現で、舞踊のもつ表現力の大きさに目を開かされた感があった。なんとかお二人の思いを音楽によってさらに生かそうと、こちらも喰いついていかざるを得ないものがあった。バレエの指揮というのはそのような感情を喚起されるものだなんて、一ヶ月前には想像だにできなかった。

 無事全公演が終了し、舞台上にカンパニー全員が集まって拍手で称えあった。振付・演出の石井さんと私も拍手をいただいた。

 今日も何人かの知人たちが観にきてくれていた。贈り物などをいただいて嬉しかった。

 打ち上げにお誘いいただいたので参加した。新国のバレエ団の打ち上げに指揮者が参加するのは開場以来初めてではないかという話を伺って、しまった、辞退すべきだったかと一瞬たじろいだが、3分後には忘れてすっかり話込んでいた。カルメン役も4人揃い、数十人で大賑わいの打ち上げには圧倒されたが、皆さんはこんなのは普通だといった感じ!? 何事をするにも基礎体力がある人たちは違う!

 一ヶ月間、幸せな仕事をさせていただいた。素晴らしい新国立劇場バレエ団が、今後ますます輝いていきますように。

 そうそう、午前中に航空券代を払いに某旅行代理店に行きました。4月9日に離日します。


BGM: チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」
    マイケル・ティルソン・トーマス指揮ボストン交響楽団
          (1970年録音、Deutsche Grammophon / Tower Records)

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