=第1部=
2時40分起床。ろくに寝ていません。が、今日は一人で外国人警察に行くので、気兼ねなく思い切って早い時間に出陣することにしたのです。深夜トラムを乗り継いで、4時20分過ぎには警察に到着。
し、しかし、既に100人以上が列をなして並んでいました!! 負けた・・・ 先頭の人は一体何時から並んでいるのでしょうか??
5時になると、行列を整理するための警官が2人ほどやってきました。もうこの時には行列は目算で400人ほどになっていたのではないでしょうか。きちんと2列に整列して並ぶことを要求されました。そして横入りできないようにテープで無断立ち入り禁止区域を作ったりして、厳しくコントロールしてくれていました。
待って待って7時過ぎ、警察が開きました。私が警察に入れたのは7時半過ぎ。無事番号札をもらって、警察の中で待ちます。困ったのは記入するように渡された滞在登録のための用紙がチェコ語でしか書かれていなかったことです。大体は分かったのですが、きちんとした辞書を持ってきていなかったのでいくつか分からない単語がありました。そこで隣にいたお姉さまに「英語を話しますか?」と話しかけ、「いいえ・・・」という返事も全く無視して食い下がり何とか教えてもらいました。お姉さまは本当にほとんど英語が話せなかったので、どうして私が理解できたのかは今から考えると謎ですが・・・
警察の中はどんどんごったがえしてきます。この時間にこれだけ賑わっている場所は市場かここくらいしかないでしょう。そんなくだらないことを考えながらも、自分の番号が近づいてくるにつれ、次第にドキドキしてきました。8時50分、やっと自分の番がまわってきました。
まず、大家さん夫人が私の今回の件についてそのディティールを書いてくださった手紙を印籠のように担当の方に見せました。ちなみに、われわれチェコ語が不得手な外国人にとって大きな問題は警察の人たちがほとんど英語を話せないということなのですが、私の担当をしてくれた方は英語を少し話せたので助かりました。えーそれで、印籠のように見せた手紙、その方は超適当に眺めてから「登録でしょ?」と仰るので、「それだけじゃなくて、うんぬんかんぬん」と必死で説明して、そこでやっと手紙をちゃんと読んでもらえました。
そこで担当の方は一旦席を外されて、私はその場で待つことになりました。10分以上は待ちました。生きた心地がしなかった、と書けば大袈裟に過ぎるかもしれませんが正直そんな感じでした。もし担当の方が戻って来た時に、「こんなことはこちらでは知らない、さよなら、また調べてきて」と言われたらどうしよう、そんなことばかり考えていました。ですから、その担当の方が私の申請書類を持ってきて、そこに外国人警察と東京のチェコ共和国大使館とのメールのやりとりのコピーが挟まっているのを見た時、心底ホッとしました。
その後、保険の証券を見せろと言われたり (持って行かなくてはいけないとは誰にも言われてませんでしたが、とにかく全書類を持って行っていたので見せることが出来ました。良かった・・・) 、上司らしき人が出てきて事情を把握するまで渋い顔をしたりと、冷や冷やさせられることは続きましたが、そうこうするうちに私のパスポート上にある東京で発行されたヴィザには「無効」の印が押され、新しいヴィザの台紙に私のデータが印刷され、そして遂に、遂にです、新しいヴィザがパスポートに貼り付けられ、いくつかのスタンプも押されました。仕上がった時、「はいはい」という感じで軽くパスポートを渡されたので、つい「これで全部終わったのか?外国人登録関係も全部終わったのか?これでノー・プロブレムなのか?」としつこく尋ねてしまいました。
かくして、朝9時半、晴れて私は来年3月下旬までチェコ共和国への滞在を許可された身となりました!!
速攻大家さん夫人に電話をして謝意をお伝えし、部屋に戻ってからは東京の大使館に報告とお礼のメールをしました。
今回の件を通じて、私は相当な忍耐強さとしぶとさ (あきらめの悪さ?) を身につけたような気がします。
少々興奮気味でしたが、お昼頃には眠りに落ちました。
=第2部=
夕方に再起床。夜は晴れ晴れとした気持ちでスメタナ・ホールに出かけました。
今日聴いたコンサート@市民会館 スメタナ・ホール
第63回「プラハの春」音楽祭 オーケストラ・シリーズ
ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
指揮:ペトル・アルトリヒテル
スメタナ:連作交響詩「わが祖国」
昨日のオープニング・コンサートと同内容ですが、今夜は大統領はお見えにならないため「リブシェ」のファンファーレと国歌の演奏はありませんでした。
指揮のアルトリヒテルさんはかなりエネルギッシュで激しい指揮ぶりでした。昨日テレビで観ていた時にもそれは感じていたのですが、今日はさらに「ぶちきれている」ような感じがしました。結果としては少々イタリア・オペラ的な (?) 雰囲気を感じたところも多く、私が何回か聞いたチェコ・フィルの誇り高き演奏スタイルとははっきりと一線を画していました。
それに加えて明らかに昨日とは違う演奏を志向しているように感じました。「モルダウ」の最後の2つの和音など、昨日は驚くほど畳み掛けていたのに、今日はまたずいぶんゆっくりと振っていらっしゃいました。そういったことが、全曲を通じてずいぶんとありました。
上に書いたこととは逆のことを言うようですが、ダイナミクスの変更などといった楽譜上の面ではチェコ・フィルと同じ処理をしていた部分もありました (アルトリヒテルさんはチェコ・フィルでノイマンのアシスタントをされていたことがあるようです。ただしそのことが今回の楽譜上の処理に影響しているのかどうかはあくまで不明ですが) 。が、特にヴァイオリンで16分音符のきざみ (あるいはトレモロ) がキャンセルされている部分がいくつかあったのが今夜はとても目と耳に残って、チェコ・フィルではどう処理していたか、改めて検証したいなあと思いながら帰りました。
そういえば、昨日も書いたオーボエ奏者、全曲終了後にすぐアルトリヒテル氏に起立を促されていましたが、まずは楽器を高く掲げてから颯爽と起立されたのが印象的でした。そしてすぐに後ろのクラリネット奏者を讃えて握手を交わしていました。かと思ったら今度はフルート奏者がオーボエ奏者に腕を組んできて満足そうな笑顔で聴衆の拍手を受けていました。こういうオーケストラ、すごく良いですよね。私はブルノ・フィルのファンになりましたよ。このように、オーケストラ奏者の人間的雰囲気が聴衆に与える影響は、とても大きいと思うのです。
ともかく、今日は幸せな日でした!!
BGM: ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」 (マーラー版)
ペーター・ティボリス指揮ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団ほか
(1991年録音、Bridge)