今日聴いたコンサート@市民会館 スメタナ・ホール
第63回「プラハの春」音楽祭 オーケストラ・シリーズ
BBC交響楽団演奏会
指揮:イルジー・ビェロフラーヴェク
語り:オタカル・ブロウセク (ミロスラフ・モラヴェツの代役として)
ピアノ:エリザーベト・レオンスカヤ (ピョートル・アンデルシェフスキの代役として)
カベラーチ:交響曲第7番 作品52
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15
アンコール/シューベルト:4つの即興曲 作品90 D 899 第3番 変ト長調
ショスタコーヴィチ:交響曲第6番 ロ短調 作品54
アンコール/ブリテン:歌劇「ピーター・グライムズ」から「4つの海の間奏曲」 作品33a
第4曲 「嵐」
アンコール/ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第1集 作品46 第3番 変イ長調
一連の「プラハの春」音楽祭のコンサートの中でも特に楽しみにしていたのがこの今日と明日のBBC交響楽団の演奏会。12月にロンドンでこのコンビでの演奏を聴いて感銘を受けていましたので。
プラハ音楽界の重要なポストにはほとんどすべて足跡をつけているのではというビェロフラーヴェク氏ですが、この「プラハの春」音楽祭でもプレジデントという立場にあります。
今日はソリストが2人とも代役。音楽祭としては綱渡りの心境かもしれませんが、ゲットする代役がもはや代役とは呼べないような大物ばかりなのには驚きます。
カベラーチの交響曲は新約聖書に拠を求めることのできる象徴的な詩の語りを伴った作品。今月はカベラーチの作品を3作聴きましたがどの作品も作風が異なり今ひとつ作曲家像が自分の中で確定しない感じです。ブロウセクさんは1924年生まれ。チェコを代表する俳優とのことで、映画出演も少なくないようですが、私は残念ながらこの分野にとんと疎いです。しかしながら、深い発音 (私でも聞き取れるほどの分かりやすさ!) と80代とは思えない声の張りを聞くだけでもこの方がただものではない方であることは分かりました。
ベートーヴェンの協奏曲は渋い演奏。BBC交響楽団は低音の響きに充実感があってこうした作品でも聴き応えがあります。
堂々たる4つ振りで始まったショスタコーヴィチの交響曲は、前半では少々抑え気味だったビェロフラーヴェク氏がいよいよ勝負に出てきたか、という感がありました。この曲の第1楽章はテンポを保つのが難しいようで、大抵の演奏ではスコアの指示よりもどんどん速い方向に流れてしまうのですが、今日の演奏は基本のテンポが端折られることなく保たれていたので非常に緊張感がありました。ただ、客席はざわざわしていて、ドアがバタンと閉まる大きな音が3回もしたり、携帯が大音量で鳴ったりして至極残念でした・・・
第2・3楽章は速すぎず遅すぎずのテンポでしたが、ビェロフラーヴェク氏の特徴である推進力が全開で圧倒的な演奏でした。オーケストラも指揮者も悔しいくらいに全くミスを感じさせませんでした。決して饒舌な演奏でもなければ金管楽器の響きが全面に押し出された演奏でもなく、聴き手の趣味によっては評価が分かれるかもしれませんが、演奏の完成度という点では誰も文句のつけようがないものだったと思います。
アンコール (ブリテンはこのコンビのCDよりも2割増くらいの速さで唖然!!) のあとは、オーケストラがマエストロの凱旋公演を大いに讃えて終わりました。ただ、12月のチェコ・フィルの定期の時もそうでしたが、私には、ビェロフラーヴェク氏へのプラハの聴衆の反応は何か抑えたものが感じられて仕方ありません。今日もこれだけの演奏だったのに、ブラヴォーはあったものの指揮者に対する聴衆の特別な反応はなく、スタンディング・オベーションもありませんでした。何でなのでしょう?
BGM: ブリテン:歌劇「ピータ・グライムズ」から「4つの海の間奏曲」
イルジー・ビェロフラーヴェク指揮BBC交響楽団 (2007年録音、Deutsche Grammophon)