今日聴いたコンサート@市民会館 スメタナ・ホール
第63回「プラハの春」音楽祭 オーケストラ・シリーズ
プラハ放送交響楽団演奏会
指揮:ウラディミール・ヴァーレク
バリトン:イヴァン・クスニェル
イェレミアーシュ:古いチェコのコラール「主は汝に恐れるなかれと命じる」による幻想曲
ドヴォルザーク:聖書の歌 作品99
プロコフィエフ:交響曲第5番 変ロ長調 作品100
「チェコスロヴァキア・ラジオの創立85周年を記念したこの演奏会は、ナチズムとコミュニズムの犠牲者たちに捧げられる」とのタイトルが掲げられた演奏会でした。
イェレミアーシュという作曲家は全く聞いたこともなかったのですが、ノヴァークに師事した1892年生まれ1962年没のチェコの作曲家で、この放送響の指揮者としても活躍した方だそうです。曲のタイトルが拙い訳で申し訳ありません。一応チェコ語では <Tent' Pán velí se nebáti> 、英語では <The Lord commands thee not to fear> というタイトルのコラールです。1938年に室内楽作品として作曲されて翌年オーケストラ作品として編曲されたようですから丁度ナチスの手がチェコスロヴァキアに及んだ時期の作品ということですね。曲自体は特に目新しいことは何もなかったのですが、オルガンの前で聴いていたら曲の最後で後ろからいきなりオルガンが鳴り始めたのでびっくりしました。奏者は舞台上にいたようです。
ドヴォルザークは、ツェマーネクの編曲した第6〜10番を含んだ全10曲ヴァージョンでの演奏でした。クスニェルさんはただシンプルに声を出すだけで人を感激させることの出来る得難いバリトンで、間違いなくこの曲を歌わせたら世界一でしょうね。ドヴォルザークのアメリカ時代の作品ですが、その影響強き5音音階とチェコ語は不思議なほどマッチします。名曲なのですがいささかオーケストレーションの色彩に乏しいところがあるので聴かせる演奏に仕上げるのはなかなか難しそうです。いつか取り組んでみたいのですが。
どうして上記のようなタイトルが掲げられた演奏会のメインがソヴィエトの作品なんだろうと最初は少々首をひねりましたが、この作品の初演の日がソヴィエトがナチスに勝利したセレモニーの日でもあった、ということと関係があるのでしょうか・・・ ともかく、私としてはそういった文脈からは離れて演奏を聴きました。
何度も書いていますが、放送響は重心の低く、少々ゴツゴツした感じのサウンドに魅力があり、そして個人的には強烈なトランペットが印象的なオーケストラです。今日は大体予想通り、ギンギンに音量が出尽くした演奏でこのオーケストラを聴くこととしては大満足です。
ヴァーレク氏は舞台上でのコンサートマスターとの握手も0.5秒以内という非常に素っ気ない人柄のようですが、うまくいった時には楽員に微笑みかけるというコンタクトが今日は何度も見れて、そういったことの大切さを改めて感じ、自分を省みて恥じ入った次第です。ただしヴァーレク氏、うまくいかないと恐ろしそうです。第4楽章の主部に入るとき、4拍空振り (4つ振りでした) したのにヴィオラが崩れて、大層ご機嫌を損ねられて怒ったように腕を無造作に下ろしたらそこにホルンが食い込んできてしまってさらに大混乱。しばらくかなり腹を立てながら振っていらっしゃったように見えました。しばらく後になってもヴィオラの方を見ていたし。ただ、全曲が終わった後にはちゃんと (ヴァーレク氏なりの) 笑顔でオーケストラを讃えているあたり、結局はこのオーケストラを愛しているのだなあという感じが伝わってきました (23年間首席指揮者を務めているのです) 。私はヴィオラの首席の方の暗く落ち込んだ顔が、ヴァーレク氏に握手を求められた時にパッと笑顔になったのを見逃しませんでした (握手は0.5秒以内でしたが!) 。
BGM: ドヴォルザーク:聖書の歌
ヴィエラ・ソウクポヴァー (Alto)、イヴァン・モラヴェツ (Pf.)
(1967年録音、Supraphon)