Diary


6/28

 ホテルをチェックアウトして、タクシーで再びリトミシュルへ。インフォメーションセンターで帰りの電車のことを尋ねたり、音楽祭の50周年記念誌などを買い求めたりしてから、さてどこを観光をしようかと地図を拡げるも、リトミシュル城のほかには「スメタナの家」と「スメタナの生家」くらいしかなく、しかも「生家」はリトミシュル城のところにあるようでしたので、選択の余地なく「スメタナの家 (スメタヌーフ・ドゥーム) 」に向かいました。


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 随分と大層な建物だなあと思ったら、中はコンサート・ホールでした。家ではありませんでした! チェコ語の「ドゥーム」という単語は確かに「家」という意味ですが、例えば有名なスメタナ・ホールがあるプラハの有名な建物「オベツニー・ドゥーム」が日本語では「市民会館」と訳されていることから考えると、どうやらここも「スメタナ会館」とでも訳した方が良さそうです。英語の案内でも <Smetana's House> となっていましたので、私のように勘違いする外国人の観光客の方も多いことでしょう。

 丁度音楽祭の無料のピアノ・リサイタルが行われているところでした。曲中でも入れてくれました。うーん、もうあと30分早く来ていれば良かったです。リサーチ不足。


今日聴いたコンサート1@リトミシュル スメタナ会館

第50回「スメタナのリトミシュル」音楽祭
ピアノ・マチネー

ピアノ:イトカ・チェホヴァー

 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 KV 310 (未聴)
 リスト:メフィスト・ワルツ第1番 「村の居酒屋での踊り」 (途中から聴く)
 スメタナ:「夢」〜6つの性格的な小品
 アンコール/スメタナ: (曲目不明)
 アンコール/ショパン:24の前奏曲 作品28 から (詳細不明)


 プログラムによれば、チェホヴァーさんは現在スプラフォン・レーベルにスメタナのピアノ作品全集 (全7枚) の録音を準備中とのこと。CD7枚分もスメタナのピアノ曲があるというのはちょっと驚きです。不勉強ながら私はアンドラーシュ・シフの弾いたポルカ集を持っていたくらいでした。 (と思っていましたが、i tunes で調べたらチェホヴァーさんのスメタナも1枚持っていました。でも聴いた記憶がないので持っていないのと同じですね・・・)

 ですので、偶然でしたが「夢」のような作品を聴けたのは貴重でした。チェコの農民のパーティの情景を描いた、いかにもボヘミアの国民楽派らしい部分もありますが、全体としては、管弦楽曲同様リストの影響を多大に感じるものがありました。今日は直前にリストが演奏されていましたが、曲が描いているそれぞれの情景的にも、ここでプログラムが意図しているところは非常に明確でした。

 コンサートが終わるともうあまりゲネプロまで時間がありませんでしたので、昼食は後回しにしてお城に向かいました。今日のゲネプロは昨日にも増してセキュリティが緩い、というか最初からセキュリティする気が全くないのか、演奏中でも構わず観光客のグループらしき人たちが何度もどたどたと入ってくるような雰囲気でした。

 ゲネプロ終了後、スメタナの生家へ。思いっきりお城の敷地内にありました。どうしてこんなところに?と思ったら、スメタナのお父さんはこのお城のためのビール職人だったということでした。そういえばドヴォルザークの生家は肉屋兼宿屋。となればやはりビールは欠かせなかったでしょう。さすがビールの国の国民的作曲家たちはその生まれからして国民的!? (基本知識:チェコは、国民1人あたりのビール年鑑消費量が世界一の国です。)

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 やっと遅い昼食。土曜日ということもあり街が閑散としていて焦りましたが、何とかホテルのレストランを見つけられました。街の中心にあるスメタナ像もしっかり拝んできました。記憶があやふやですが、この像の落成記念の時にはスメタナご本人もいらしたのではなかったかな? (違っていたらすいません!ご教示を。)

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 その閑散とした街中とは逆に、今日の演奏会は満員御礼でキャンセルチケットの発売など当日券も一切なし。なのに先輩は今日も音楽祭の事務局でチケットをゲットされていました。親切な事務局員の方のおかげなのですが、先輩は相当な強運の持ち主だとしか言いようがありません!


今日聴いたコンサート2@リトミシュル城 第2中庭

第50回「スメタナのリトミシュル」音楽祭
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団演奏会

指揮:リボル・ペシェク

 スメタナ:連作交響詩「わが祖国」


 ペシェクさんはチェコ・フィルとの共演歴が期間・回数ともに多い指揮者のお一人で、「プラハの春」音楽祭のオープニングでチェコ・フィルと「わが祖国」を演奏されたこともあります。完璧な暗譜で、ご自分がどうされたいかを極めてしっかり自覚されていて、それをかつオーケストラに明瞭に伝えていらっしゃるお姿は、やはりチェコを代表する指揮者のお一人であることを示していました。大変お元気ですが、実はもう75歳になられます。いつまでも今日のようにお元気でいただきたいです。テンポなどの作り方は、録音なども含めて私が今までに聴いた色々な演奏の中で一番動きが多かったように思いました。所謂伝統的なスタイルを少し強調したような、ローカル色満点の演奏だったのではないでしょうか。

 演奏会後、先輩の荷物をホテルでピックアップして駅へ。切符売場が閉まったままなので近くにいた方に伺ったら、車掌さんから電車の中で買うとのこと。

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 一両編成の電車がやってきました。ちょっとわくわくするほど田舎くさいです。発車すると、車掌さんが次の駅で降りる人を聞きます。まるでバスです。

 ホツェニュという駅で乗り換えてプラハへ。夕食は食堂車で。プラハに着いたら23時を過ぎていました。そこから先輩が宿泊されるホテルへのご案内を私は要領良く出来ず、時間がかかった上に先輩を心細くさせてしまい、大変に申し訳なかったです。プラハの中央駅の周りはなんだかちょっと物騒な雰囲気がするのでありまして。結局タクシーでホテルまでお送りし、私自身はそのあと深夜トラムを使って2時頃帰宅しました。


BGM: スーク:組曲「おとぎ話」
     リボル・ペシェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団   (1981年録音、Supraphon)

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