23日と24日に聴いたコンサート@ルドルフィヌム ドヴォルザーク・ホール
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会 (EFチクルス第2回/第1日・第2日)
指揮:ロナルド・ゾルマン
メゾ・ソプラノ:クリスティアーネ・ストットイン
リゲティ:アトモスフェール
ワーグナー:歌劇「ローエングリン」 第1幕への前奏曲
ワーグナー:ヴェーゼンドンク歌曲集
リスト:交響詩「オルフェウス」
バルトーク:組曲「中国の不思議な役人」
ハンガリーの作曲家の作品を中心に据えながら音楽的なコントラストも狙ったなかなか凝ったプログラムでした。
ゾルマンさんの意向でリゲティから「ローエングリン」へはアタッカで演奏されました (プログラムにもわざわざ <attacca> と記載されていました) 。それにより「ローエングリン」冒頭の清らかさを非常に際立って美しく感じることができますし、語法は全く違えどこの2曲に共通するある種の「アトモスフェール」も感じ取れ、なるほどと納得しながら聴いていました。
チェコ・フィルの弦楽器セクションの音の美しさをデモンストレートする曲として、この「ローエングリン」の前奏曲ほど適した曲もないと思うのですが、アルヒーフの記録によれば意外にも1935年にカレル・シェイナの指揮で演奏して以来、実に73年間も演奏会で採り上げていなかったようです。今回のえも言われぬ美しい演奏を聴くと、毎年でもいいからまた演奏して欲しいと思ってしまいます。
「ヴェーゼンドンク歌曲集」は通常の (ヘンツェ編ではなくて) モットル編の版での演奏でした。ここではただただストットインさんの歌声に痺れました。ドイツものに強い実力派メゾとして今後目が離せない存在になりそうです。2日目の演奏の後には舞台上でドイツの音楽賞の授賞式がありましたがこれはどうやら彼女が録音した (あるいは、実演に対して?) マルタン作曲「旗手クリストフ・リルケの愛と死の歌」の演奏に対してのもののようでした。授賞式は少々長く、また今日の演奏とは関係のないものだったので次第に客席には倦怠感が漂いましたが、最後に彼女がコメントで「リルケはプラハで生まれたので・・・」と述べて再びプラハ市民の気持ちをぐっとつかむあたり、流石でした。
リストの「オルフェウス」は今まで勉強したことがありませんでしたが、曲の頂点をうまく形作るのが難しいもののなかなか魅惑的な佳曲でした。ちなみにハープ (2台) の負担がとても大きい曲なのでハーピストはこの曲をやることになったら要注意!って言ってもまずやることないですよね・・・
今回のメインは私の大好きな「中国の不思議な役人」の組曲版。ゾルマンさんはすごい勢いでずんずん突き進んでいくのでハラハラしながら聴いていましたが、それが良い意味でのスリリングさにうまく向かっていって、終演後の客席の盛り上がりへとつながりました。
最後にゾルマン氏のご紹介を少し。ベルギーの方で、生年は分かりませんが指揮者としてのキャリアは1973年にスタートされたとプログラムにありました。9月には若杉先生の代役として東京フィルの定期を振られていたようですね。現代ものに強く、アンサンブル・アンテルコンタンポランに1982年には既に招かれていたということです。また個人的なポイントは、氏が1994年から2002年までメキシコ州立自治大学フィルハーモニー管弦楽団 (メキシコ・シティ有数のプロのオーケストラです) の芸術監督を務められていたことで、その時代に Urtext というレーベルに録音されたこのコンビの「センセマヤ」や「ワパンゴ」を愛聴している私としては遂に憧れの存在目の前に現る、といった感がありました。お人柄も素晴らしい方です。
BGM:マルタン:旗手クリストフ・リルケの愛と死の歌
クリスティアーネ・ストットイン(コントラルト)
ヤック・ファン・ステーン指揮ヴィンタートゥール・ムジークコレギウム管弦楽団
(2006年録音、Musikproduktion Dabringhaus und Grimm)