21日に聴いたコンサート1@ルドルフィヌム ドヴォルザーク・ホール
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会 (「ルドルフィヌムでの午後」シリーズ第4回)
指揮:ウラディミール・ヴァーレク
スメタナ:交響詩「リチャード三世」
ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70
21日に聴いたコンサート2@ルドルフィヌム ドヴォルザーク・ホール
IKEM・チェコ・フィルハーモニー管弦楽団共催 慈善演奏会
指揮:ウラディミール・ヴァーレク
ヴィオラ:ヤロスラフ・ポンディェリーチェク
スメタナ:交響詩「リチャード三世」
ルカーシュ:ヴィオラ協奏曲 作品185
ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70
21日はルドルフィヌムでチェコ・フィルの演奏会が2回ありました。夜の演奏会、ヴィオラのソリストはチェコ・フィルの首席奏者。チェコの作曲家ルカーシュ (1928-2007) のヴィオラ協奏曲は1986年にコシュラー指揮のチェコ・フィル、そして当時チェコ・フィルの副主席奏者だった (のちに首席奏者) カレル・シュペリナによって同じルドルフィヌムで初演されています。難解なところのない聴きやすい作品で、第2楽章はどことなくドヴォルザークのチェロ協奏曲の第2楽章を思わせます。
ヴァーレク氏はいつもの、拍はしっかり示して細かいところはオーケストラに任せるやり方でしたが、おかげでオーケストラはのびのびと演奏していたように思います。チェコ・フィルは指揮者があまり棒で細かく指示せずに、出来るだけオーケストラに任せた時、一番豊かにこのホールの音を満たすような気がいつもしていますが、今日はかなり良くルドルフィヌムが響いていました。
23日に聴いたコンサート@ルドルフィヌム ドヴォルザーク・ホール
プラハ放送交響楽団 第82コンサート・シーズン 第9回定期演奏会
指揮:ヤン・クチェラ
ドヴォルザーク:交響詩「水の精」 作品107
ドヴォルザーク:交響詩「真昼の魔女」 作品108
ムソルグスキー (orch. ラヴェル) :組曲「展覧会の絵」
25日に聴いたコンサート@市民会館 スメタナ・ホール
プラハ交響楽団 オーケストラ・シリーズA/B 第7回演奏会
指揮:マルコ・イヴァノヴィチ
ピアノ:フランチェスコ・ピエモンテージ
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 作品26
アンコール/ (曲目不明)
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
23日と25日は私より2~3歳若い2人の指揮者の演奏会を聴きました。クチェラさんの指揮を拝見するのは初めて。現在この放送響の指揮者というタイトルをお持ちになって活動されています。師匠はヴァーレク氏とのこと、氏はしっかり2階最前列で鑑賞していらっしゃいました。まるで試験のようでクチェラ氏はさぞ緊張されたのでは?
左手で持つ指揮棒がトレードマークのイヴァノヴィチさんは、2002年のポーランドでのコンクールの時から私は知っています。こちらはビェロフラーヴェク氏とエリシュカ氏に師事したということです。
お二人とも極めて入念に準備をされてきたのが良く分かりました。結局どれほど指揮者が指揮台に立つ前に準備をしてきたかということが演奏の充実度にダイレクトに影響するという、いわば当たり前の事実を改めて目の前にして、身の引き締まる思いがしました。そして一振り一振りが丁寧なお二人の指揮ぶりから、どちらのオーケストラからも、いつもより透明感のある美しい音色を引き出していました。
チェコの指揮者は基本的にみな、拍とテンポをしっかり示すことを大切にします。フルトヴェングラー・タイプやクライバー・タイプはまず目にしません。今回見たお二人も、しっかりその伝統のラインの上に立っていました。ちょっと先に書いたヴァーレク氏とチェコ・フィルの演奏会のことと内容がだぶりますが、興味深いことにチェコの (少なくともプラハの) オーケストラというのも、拍とテンポさえはっきり示しておけば、音楽的なことのほうはオーケストラのほうでうまくこしらえてしまう、みたいなところがあります。その関係性みたいなものが独特で面白いです。
25日の演奏会のメインはベートーヴェンの「田園」でしたが、ちょうどロマン・ロランの「ベートーヴェンの生涯」を読んでいるところでタイムリーでした。ロランも少し書いていますが、この曲については、描写音楽うんぬんよりも、鳥の声などをベートーヴェンには聞くことが出来なかったということに思いを馳せることが大切なような気がします。先日ボンのベートーヴェン・ハウスで、彼の聴覚障害が実際どのようであったかを科学的に再現した録音を聴く機会があり、彼は特に高音が聞こえづらかったということを知りました。それはつまり、鳥の声の音の高さです。ちなみにこれは鳥の声のことではないのですが、ベートーヴェンは「ハイリゲンシュタットの遺書」の中で、田舎に行った時、隣にいる人には聞こえている遠くからの横笛の音や、あるいは羊飼いの歌声を自分は全く聞くことが出来なかったことがどれだけ屈辱であったかということを書いています。
ベートーヴェンは「運命」と「田園」を、ほぼ同じ時期に書きました。「運命」は彼の精神の戦いの記録として、もちろん大切な作品です。しかし一方、「田園」という作品は、当時の彼が「最も聞きたかった音楽」として、もしかしたらベートーヴェン自身にとっては「運命」よりも大切な作品であった可能性すらあるのでは、と、そんなことをぼんやり考えます。
さて、ここプラハはここしばらく天気が良くありません。雪がちょっと降ったり雨がちょっと降ったり。ただ25日に気温がぐっと上がって、氷点下地獄からはやっと解放されました。しかし25日は日本円対チェコ・コルナのレートもぐっと上がりました。このまま円高天国に別れを告げることになるのでしょうか!?
今週のチェコ・フィルの演奏会はベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」、指揮者はウルグアイ生まれのカルロス・カルマー氏です。「ミサ・ソレムニス」に生演奏で接するのはもしかしたら大学1年生の時以来かもしれません。作品のスケールの大きさには圧倒されっぱなしです。この曲をもし振れと言われたら1年前から譜読みと体力作りに励まなければいけなさそうです。さて今回はどのような演奏会になるでしょうか。
この演奏会のリハーサルを見せていただくのと並行して、ライブラリアンの方の御厚意でスメタナ「わが祖国」の貴重なパート譜を見させていただく機会を得ました。情報があまりに膨大ですが、出来る限り吸収して今後に生かしたいと思っています。11月に東京の新日本交響楽団というアマチュアのオーケストラで全曲を指揮させていただくことになっています。
BGM:モーツァルト:ミサ曲 ハ短調 KV 427
パーヴォ・ヤルヴィ指揮パリ管弦楽団・合唱団ほか (2009年録音、France musique)