Diary


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 チェコと日本の時差は8時間。こちらで寝る頃の時間が日本では朝です。ちょっと夜更かししていると、朝を迎えた日本からメールが舞い込みます。昨夜は日記を書こうと思った時にちょうどいくつか返事を書くべきメールが届きまして・・・というのは昨日日記を書かなかった言い訳です、はい。

 ほぼ一日中部屋にこもって楽譜を読んだりパート譜をチェックしたり事務的なことを処理したりとしています。なんて書いてしまうといざ指揮台に立ったときに「おい、それで一日中楽譜読んでたのかよ(怒)」などと思われそうなので書かない方が身のためですかね(汗)。以前より楽譜を読むスピードが遅くなったのか、あれーこんなに前は楽譜読むのが大変だったっけなあ、と思いながら読んでいます。悔しいけれどやっぱり20代の時の方のが頭に入るのが早かったのはもはや認めざるを得ない、という気がしてます。


 さて今日は1月から最近まで、ここに書いていなかったチェコ・フィルの演奏会で私が聴きに行ったものの記録をまとめてみます。会場はもちろん全てルドルフィヌムのドヴォルザーク・ホール。


 1月15, 16日

 指揮:マンフレッド・ホーネック
 ソプラノ:ユリアーネ・バンゼ

  ヤナーチェク:狂詩曲「タラス・ブーリバ」
  R.シュトラウス:4つの最後の歌
  ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」 (1945年版)

 1月21, 22日

 指揮:マンフレッド・ホーネック
 ピアノ:ラルス・フォークト

  ブラームス:ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 作品15
  アンコール/ (忘れました!)
  ドヴォルザーク:交響曲第6番 ニ長調 作品60


 2月26, 27日

 指揮:カルロス・カルマー
 ソプラノ:ルドミラ・ヴェルネロヴァー
 アルト:バルバラ・ヘルツル
 テノール:クリスティアン・エルスナー
 バス:ヨヘン・クプファー
 プラハ・フィルハーモニー合唱団 (合唱指揮:ルカーシュ・ヴァシレク)

  ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス 作品123


 3月6日

 指揮:マリン・オルソップ

  R.シュトラウス:アルプス交響曲 作品64
  ストラヴィンスキー:春の祭典


 1月はこの2週間の演奏会のあと、一部重複するプログラムでオーケストラはホーネックさんと共にドイツ・スイスへの長期の演奏旅行に出掛けました。ホーネックさんのドヴォルザークやヤナーチェクは、チェコ人指揮者のアプローチとはかなり異なる印象を受けますが、それだけにオーケストラのレスポンスが興味深かったです。あと「タラス・ブーリバ」に惚れました。

 カルマーさんの「ミサ・ソレムニス」はかなり早いテンポのところもありましたが、きちんと魂を入れてお振りになっていたので説得力があり、違和感は感じませんでした。ホールの容積の問題もあり、オーケストラは抑えに抑えて、という感じでしたがそれでもルドルフィヌムでは響きが一杯一杯になってしまいます。

 今月のチェコ・フィルはさらに容赦のない大曲が続きます。トラムの停留所などに張ってあるポスターに「72年ぶりに女性がチェコ・フィルを指揮」などと書かれていたオルソップさん指揮による演奏会は、とんでもないダブルメインな演奏会でした。「アルプス交響曲」がプログラムの前半だなんて、私はちょっと他に例を知りません。しかも後半が「春の祭典」とは。しかし通常のスケジュールでこのプログラムを苦もなくこなしてしまうのが現代の一流オーケストラなのですね。恐れ入りました。舞台はきつきつで、チェレスタ奏者が椅子もろとも舞台からずり落ちるのではないかと本気で心配したくらいでした。

 このオルソップさんの演奏会のゲネプロは公開で、子供たちがたくさんやってきました。公開ゲネプロには必ず解説が入ります。「アルプス交響曲」ではウインド・マシーンやサンダー・マシーンの紹介、「春の祭典」ではヴィヴァルディの「春」と並べて聴かせたり (録音物を使用) 、初演時の喧噪の様子を説明してみんなにブラボーやブーイングをさせてみたり、と、なかなかこれが面白いのです。

 本番は2日目のみを聴きましたが (1日目は国民劇場に行っていました) 、お客さんもたくさん入っていて、最後はスタンディング・オベーションになるほどの盛り上がりでした。しかしオルソップさん自身はむしろ過度な華やかさを控えたステージマナーと音楽の作りで、その点私は非常に好感を持ちました。リハーサルでは、全くどこのどんな奴だか分からない私にも彼女から話しかけて下さり、毎日バランスについて聞いてくれました。1年半リハーサルに通っていて、指揮者の方から話しかけて下さったのは、彼女のほかにはあとはロレンス・フォスターさんだけです。

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